inkblot

Crème Caramel

 僕がいくらミヒャエル・エンデについて話しても、彼は足をブラブラさせて、生返事を繰り返すだけだ。
多分今、彼の頭はライプニッツやスピノザのことで一杯なんだろう。

「今から僕が言うものが何か、当てられる?」

 僕の話があらかた終わると、おもむろに彼はそう言った。

「さあ。とりあえず言ってみて」

 僕は肩をすくめて答えた。彼はいつも唐突だ。

「そうだね。まず……」

 一体何だろう? 抽象的なものだったら、あんまり自信がないな。

「まず、それを嫌いな人はそういないだろうな。みんなに愛されているんだ」

 彼はニコニコして言った。ふむ。それだけじゃまだ難しいな。

「それで?」

「それで、それはとても繊細なんだけど絶対に誰かを裏切ったりはしない。不思議な感覚だよ。まるで、ひとつの世界のように完璧で、完結している。もっとも、崩れなきゃの話だけど」

 楽しそうに誇らしげに話すところからすると、多分食べものだろうな。
彼は哲学と同じくらい食べものが好きなんだ。

「なるほど」

「ついでに言うと、あれを大きく作るのは無粋だね。あれの良いところが消えちゃうからさ。あるべき大きさが一番いいよ。もちろん、何だってそうだけどあれは特にね」

 満足そうに、彼はそう言い終えた。彼の方からはそれで終わりのようだった。
彼とナゾナゾをやるのはこれが初めてじゃない。コツはなんとなくつかめている。たぶん、あれだ。

「分かったよ。プリンだろ?」

 彼は甘いなあと言いたげな顔をして僕を見た。


「クレーム・キャラメルだよ」

                                                                              end

  1. 2009/05/18(月) 01:27:31|
  2. etude
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