inkblot

茜色の夕日

学の帰りだった。無駄に取ってしまった5限を終えて、疲れ切っていた。

すし詰めの中の狭い座席の隙間に体を沈める。ヘッドフォンで耳を塞ぐ。

電車の乗換えが、さらに体力を消耗させる。やたらと蒸し暑かった。

それらすべてが、私を微かに苛立たせた。

1時間の長さを体感した後、最寄駅から駐輪場へ向かう。

量販店で買ったママチャリで商店街を抜けた私の目の前に、壮絶な光景が広がっていた。



前方の空が、茜色に染まっていた。



天気が悪かったり、帰宅時間が遅かったりしたせいで、ここしばらく夕暮れなんて見ていなかった。

ものすごい色だった。


私は自転車をかっ飛ばした!


追いつきたかった。手を伸ばしたかった。

距離を詰めれば詰めるほど、茜色の空は灰色の雲の奥へと逃げてしまう。

なんでだ! どうしてなんだよ!

ペダルを漕げば漕ぐほど、茜色の夕日は遠くなっていく。

家に着いたころには、残っていたのはただの曇り空だけだった。



「夕焼けがすごかったよ」

手を洗いながら話しかけると、母は一言、

「真っ暗」

と言った。やるせなかった。




  1. 2010/06/04(金) 23:56:40|
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