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ようこそウィルポリスへ

 BOCの声や曲の変化といったようなことについて、この間書いた。BUMP OF CHICKENは活動を始めてから今まで、特につまずくこともなく順調にファンを増やし、知名度を上げてきた割と珍しいバンドだが、意外にも増えていくファンやバンドの規模の拡大に悩んでいたんじゃないか。そしてここ最近やっとそれを乗り越えてきたんじゃないかというような話である。今回はBOCのライブの話をしようと思う。

 BOCは2005年くらいからライブをほとんどしなくなった。わずかに夏フェスに出たり数年に一度出るか出ないかのアルバムに合わせたレコ発ツアーをやるくらいである。BOCくらいの「邦楽ロック」のくくりに入るバンドだったら、リリースに関係なくコンスタントにライブをやる。BOCはこの時期曲調がポップになったのに加えてライブのペースも極端に落ち込んだから、余計に「もうロックバンドではないんじゃないか」と言われた。要は反感を買った訳である。

 しかしBOCがライブをやらなかったのは、集客力が上昇し、ライブハウスのキャパが大きくなっていくにつれ、ファンの感じが変わっていくのついていけなかったからじゃないか。最近バンプを聴き始めた人には想像もつかないことだと思うが、昔ライブで藤原はよく怒った。手拍子に怒り、合唱に怒り、その度に演奏を止めた。そりゃあ当たり前だ。彼はみんなでその場を楽しみたくてライブをやっている訳ではない。彼の唄は演説だ。彼の言葉に耳を傾けているとは思えないようなそういった行為が、彼は悔しくてたまらなかったんだろう。こんなに一生懸命唄っているのに。こんなたくさんの中から僕らを見つけてくれたのに、君はちゃんと聴いてくれないのかい? 彼はそう言っていたのだ。

 まあでもエレカシじゃないんだから、オーディエンスもライブで正座して聴いたりはしてくれない訳である。どうやらオーディエンスは手拍子や合唱をしたいらしい。そのうちそう気付いた彼らは、まずそれを受け入れようとしたようである。なんとなくだが、かたちから入ったような気がするな。オーディエンスはああいうことをしたがる。ならそれをゆるそう、受け入れよう。そういう段階から入って、だんだんと考えが先に進んでいく。彼らは俺らの唄を無視しようとして手拍子をする訳ではない。今がとても楽しいから、一緒にその場を楽しみたいから手を叩いて歌うんだ。とにかく唄を聴くために集まってくれて、今を楽しんでくれている。彼らが僕らをどれだけ分かってくれているのかは分からない。だけど、今たくさんの中から僕らを見つけてくれた人たちを楽しませてあげることが、一緒に楽しむことが大事なんだろう。それが結実してここ数年のツアーがあるんだろう。

 デカいハコでやるのも本当は結構嫌だったんじゃないか。いつだってひとりひとりに向けて唄っているのに、幕張メッセの客席はあまりに遠くて、オーディエンスは最早一個の人間ではなく、ひとかたまりの海のようだ。バンドも今では随分小回りがきかなくなった。前にゴッチが「アジカンは巨大ロボットに乗り込む感じ」というようなことをツイッターで言っていたが、まさにそうだ。四人と何人かの信頼できる仲間、それがバンドだったはずなのに、いつの間にかサーカスよりも大きい、よく分からない組織になっている。ただ唄うだけに、こんなにたくさんの知らない人の手を借りる必要があるのか? 納得いかなかったんだろうな。ずっと。

 だが今はもうそうじゃない。もうあの規模でオーディエンスと向き合うことができないなら、規模のデカさを利用すればいい。「ハコがデカすぎるなら、もうひとつステージを作ってしまえばいいじゃない」という訳である。

 お金はたくさんあるから、カッコいいムービーを流そう。その方がワクワクする。お金はたくさんあるから、金テープや銀テープも飛ばしてみよう。その方が楽しい。お金はたくさんあるから、綺麗なザイロバンドも配ろう。その方が思い出に残る。

 これは彼らが作り出すフェスティバルである。彼らはこの機会を逃したらもう何も返せないと分かっていて、一日にすべてを詰め込む。

 たとえば細美さんがスタッフと闘いながら凄まじい努力でチケットやグッズの値段を抑えているのとBOCのやっていることは一見真逆だが、本質的には同じことだ。これが彼らのオーディエンスに対する誠意なのである。

 しかしステージの上の様子も前とは違うよな。かつて彼らは棒立ちで楽器を弾き、表情も硬かった。藤原なんか「ステージに上がる時は死刑台に上がるような気持ちがする。降りる時になってやっと、『ああ、今日もギロチンは落ちてこなかった』と思う」とまで言っていたからな。あの頃も未だに好きだ。だが、よく動き、すごく普通にステージの上に立っている彼らはとてもいい。

 たくさんの仕掛けは仕掛け終わって、後はもしかしたらもう会えないかもしれない、まだ見ぬオーディエンスがやって来るのを待つだけである。見る間にアリーナは人でいっぱいになり、ドームの中に焦らすようなボレロが満ちる。紗幕が落ち、現れた彼らはこう言うだろう、ようこそウィルポリスへ。楽しもうぜ。
  1. 2013/10/17(木) 22:26:51|
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  1. 2013/10/20(日) 18:08:35 |
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Re: うんうんうん。

コメントありがとうございます。嬉しいっす! だが返信遅くて申し訳ないっす。。
そうっすね、進路の決まっていない崖っぷちの大学生っす。苦 
ライターか。。なりたいですが、問題は雇ってもらえるかってことだよな。。
いけますかね?真顔 なんかよさげな求人あったら教えてください!笑 

これからもぼちぼちやっていくんでよろしくお願いします! 

  1. 2013/10/28(月) 13:07:04 |
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  3. 北田斎 #-
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