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20130423メレンゲ その1

 いやはやまったく、最初の一音から目を見開いてしまった。一曲目は「声」、前にだって聴いたことはあるけども、こんなに声が張り詰めていたのは初めてだった。クボは真剣な表情である。緊張はさほどしていない。自然に意図して歌っているのが分かった。声がこれ以上ない鋭さを持っている。そのままの勢いで「カメレオン」が始まった時はどうしようかと思った。音源ではいくらか内に籠ったような歌い方だが、今日のこの歌は白刃が降り注ぐようだった。至近距離だ、もうとっくに切り刻まれている。曲が終わるとアイパッドの歌詞をめくる一瞬だけ残して「絵本」。ドラムだとか楽器はもう暴れる機会しか窺っていない。抑えてはいるが、こんなポップな曲の底で蠢いている。この曲のサビはいつもなんだか歌いづらそうな苦しそうな感じがあったが、喉の詰まったようなところはどこにもない。

 ここで何かMCがあったんだがあんまり覚えていない。

クボ:東京に戻って来ました・・・! 特になんかリリースした訳でもないのにツアーやってるんですけど。。。今回は曲をリクエストしてもらって。・・・聴きたい曲を、僕らも聴きたい。

タケシタ:えっ? どういうこと?笑 

クボ:・・・みんなの聴きたい曲が、何か聴きたい。笑 

みたいなことは言っていたかもしれない。とにかくMCは平常運転である。アコギに持ち替えて静かな弾き語りから次の曲に入る。「タイムマシーンについて」だ。鋭い。大サビの「ホントにそうだ! ボクは弱い人だ」というところは音源のように強く歌うのが個人的には好きだが、ふっと弱く歌っていた。だがそれもいい。ステージの上の彼らは、その日観た誰よりもはっきりと鮮やかに観えた。ぱっとイメージを変えていく照明の色彩が映えていた。

 続いてゴツい音でポップなイントロが導き出される。「魔法」だ。薄いナイフのような声で歌うから、こんなポップソングでも物凄いロックチューンになる。最後のワンフレーズはぱっと弾き語りになり、「もっと近づけるように」というところで伸ばして溜めた後、うまくいかなかったのか、カーディガンの袖で汗をぬぐい妙な照れ笑いをして、「君を好きでいたいな」と歌い終える。

 次の曲は「ルゥリィ」だった。ギターソロのところでクボが噛みながら「達身!」と声を上げる。しかし良い。良過ぎる。まるで自分の好みを全て見透かされているんじゃないかと錯覚しかけた。今日のライブは良い意味でおかしい。クボンゲを観る。クボは胸の痛そうな顔をして歌っている。まあでもタケシタのあの服装は望んじゃいないな。うん。ちげえ。なんかちげえ。

 このあたりでもちょっとMCがあったような気がするんだがやっぱりあんまりよく覚えていない。まあ息切れしたクボが汗を拭いて水を飲んだりギターを持ちかえたりしてチューニングを合わせる合間に、フリーズしながら何かを言ってタケシタに突っ込まれたりしていたんだろう。平常運転である。

 蒼いテレキャスに持ち替えてアルペジオから始まったのは「君に春を思う」だ。いや、なんかもう頭の中が「July」でいっぱいで一瞬「July」か?と思ってドキドキしたりなんか決してしていない。してないぞ! しかし高音が実に綺麗に出ていて素晴らしかった。次の曲は「アオバ」。かなり久しぶりである。1年ぶりくらいか。その後が「8月、落雷のストーリー」だったので、2011年3月5日のリキッドを思い出した。あっちは「8月、落雷のストーリー」の方が先だったっけか。思い出深いライブである。「8月、落雷のストーリー」のグリッサンドがなくて寂しかった。

 クボがギターを持ち替える。明転してMCをするんだなと分かる。

クボ:聴きたい曲、聴けました?笑 

タケシタ:めっちゃ首振ってる人がいるね。。苦笑 

クボ:もう帰ろうか。ウソウソ。

それから「これから盛り上げていくんで」みたいなことは言っていたかもしれない。

 ギターやシンセの音が緊張した空気と共にひたひたとハコを満たし、世界を作り上げていく。イルカの鳴き声のような音が深海のような藍色の空間を泳いでいく。「きらめく世界」だ。中盤、「胸の奥で響き合う 胸の奥同士のグラデーション」というところでディレイマシンを使うのだが、そこが非常によかった。あの空気の響き方。今まで聴いた中で最高の「きらめく世界」だったかもしれない。その勢いのまま「忘れ物」に入る。油断なんかしていないのに懐に入られているような気持ちだ。殺されそうである。もうこの頃にはドラムなんかタガが外れていて、楽器は猛獣のように猛り狂って物凄い音圧をぶちまけていたが、ボーカルはそれに全く負けていなかった。いつももうちょっと食われてたと思うんだけどな。

 クボがギターを持ったままシンセの前に移動する。左手でボコーダーのスイッチを入れる。同期音が響き渡る。「ミュージックシーン」だ。ボコーダーがかなり強くかかっている。一番を歌い終わると、クボは再び中央に戻ってギターを弾き始めた。一気に加速していく。音源の突っ張ったような歌い方とは違う。ライブ後半ともなれば尚更だが、サビはいつもつっかえたようだったが、この日は本当によく出ていた。いつもこうなら最高だよな。これからずっとこうだったらいいよな。


  1. 2013/05/04(土) 21:16:24|
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  4. | コメント:1
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コメント

Re:

こっそりコメントありがとうございます。

メレンゲ行かれましたか。おじさんたちのポテンシャル、すげーっす。けしからんことにまだかなり伸びしろを隠し持っているらしく、どんどんいいライブして来るのでホントにそろそろ波が来るんじゃないっすかね。しかし布教は重要っすね! 大阪はたのんます!笑 
  1. 2013/05/16(木) 01:17:23 |
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  3. 北田斎 #-
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