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2012.4.8 BUMP OF CHICKEN GOLD GLIDER TOUR at 幕張メッセ その4

直井:秀ちゃん、なんかしゃべったらいいじゃん。

(藤原、升のところまで行く。またいつものように伝言を預かるのかと思うが、そうではないらしい)

(升、立ち上がる)

升:(オフマイクで)今日は来てくれてありがとう! うれC-!(両腕でCを形作る)


喋った…… 秀ちゃんがライブで喋った…… 10年以上喋らなかった男がである。そして「うれC」…… 小生は茫然とした。


 そのうち、チャマが「こんなにデカい会場だったら、後ろの方は全然見えなくてかわいそうだよな」というようなことを言い出したので驚いた。しばらくゴソゴソしていたが、前方で歓声が上がる。オーディエンスが動き始めていた。だが動き始めていたのはオーディエンスだけではなかった。チャマがステージを降りる。他のメンバーもそれに続いた。上手側にあるらしい通路をどんどん後方まで歩き出す。そしてどうやらメンバー達の動きはある場所で止まった。大体Bブロックの真ん中から少しCブロック寄りといったあたりか。すぐにウッドベースやアコギを手に取り鳴らす音が聴こえて、信じられない思いをした。そう、ステージはもうひとつあったのだ。やつら、やりやがった。チャマが「ギターはほとんど同じやつなんだけど」と言っているのが聴こえる。

 Aブロック・Bブロックでは人がガンガン上手に流れていたが、まあCブロックは行き場がないのでオーディエンスが淀んでいた。ぶっちゃけ第二のステージでも我々Cブロックには大差ないんだが、それでもさっきよりは多少見えた。だが何と言っても気持ちが嬉しいよな。藤原の白いTシャツが見える。どんなアコギを持っていたかはいまいち記憶がない。音はギブソンの音だったように思うが…… そこが一番重要だというのにバカ野郎な脳みそである。

 近くのオーディエンスが何か言ったらしく、藤原が「カイワレ言うな! レッサーのこと、レッサーパンダって言うな!」と言っていた。そりゃあオーディエンスも沸く。そして始まったのは「ホリデイ」だった。マジか。生で聴く日が来るとは思わなかった。しかもアコースティックセットである。軽く走馬灯状態になっていた。勿体ないことをした。だがあれは不可抗力である。

 百万回聴き覚えのあるリフを百万回見覚えのある動きで藤原が掻き鳴らす。「fire sign」だ。でもアコースティックセットでなんか、音源でだって聴いたことがなかった。アコギなので幾分ふわっとはしているが、それでも十分力強い。しかしオーディエンスの合唱はあんまり好きになれない。

 メンバーはまた大移動して元のステージに戻っていく。2曲は意外と短いな。自分がBブロック上手側だったら、もっとやってくれと思っただろう。ぶっちゃけ3つくらいステージ作ってほしいよな。そして戻っていくのと時を同じくして、元のステージの方から微かなシンセの音が立ち上り始める。スクリーンには宇宙と、ストップウォッチのように高速で流れる数字が映し出されている。「星の鳥」だ。

 数分してメンバーもステージにたどり着く。楽器を手に取り、レスポールが轟音を上げる。「メーデー」だ。やっぱり数年前のライブ映像と比べたら遥かによくなっている。しかしなんというかやはり見どころは間奏のドラムソロだな。やっぱりカッコいいというよりはなんだか滑稽だ。でも生で観れるとは思わなかったな。実際に観ている最中というのは体感はしているけども、全く実感は湧いていない。実感が湧くのはやっぱりいつも終わった後だ。

 再び藤原がギターを持ち替える。暗がりでしばらくカチカチという音がした後、明るくなった。

「ありがとう」

 藤原がマイクに向かって言う。

「ひとつ報告があります。・・・今日はもう、半分終わりました」

「えーっ」という声がオーディエンスから起こった。

「俺だって『えー』だよ。チャマがさっきいいこと言ってたよね。。今日来てるお客さんは二度とそろわないって。ほんとそうだと思います。次君とライブで会えるのが5年後、10年後になるかもしれない。・・・クサいですか。笑 クサいよね。笑 やめとこうか」

 再びオーディエンスから声が起こる。

「クサいけど言っていいの? もしかしたらもう会えないかもしれないよね。それでも俺は会いたいです。BUMPなんか好きじゃなくなるかもしれない。それでもふと思い出した時によかったらたまに聴いてください。。。本当はここ、喋るところじゃないんだけどね。。笑 でもホントに楽しくて喋りたくなった」

 話す声すら独特な、深く柔らかく毛布のような声である。目蓋のない耳を優しく征服する、他人に耳を傾けさせる声だ。この声に耳を塞ぐことなんか一体誰にできるのだろう。少なくとも小生には無理だ。

「あと、イチニで一歩後ろに下がってもらえますか。前の方はぎっちぎちだから、そうすればもっと息しやすくなるんじゃねえかな。。。いいですか?」

 藤原の掛け声でオーディエンスが一歩下がる。

「調子悪くなったら言ってくださいね。まわりの人も助けてあげてください」

 そしてレスポールをストラトに持ち替えて、藤原は手癖でアルペジオを弾く。これが本当に好きだ。やっぱり誰よりも藤原のギターの弾き方が好きなんだろうな。もうこれは好きとかそういうもんじゃないのかもしれない。もっと根元に納まっている感じだ。藤原が延々とギターを弾いているUSTとかあったら最高だよな。しかしこれはどの曲だろうと思っていると、手癖が終わり知っているイントロが始まった。「angel fall」だ。これが誰に向けられた唄なのかはよく分かっているけども、小生は小生のコンテクストで唄を意味づけしていくから全く違う音楽家のことを頭のどこかで考えていた。だが実際、深くそのことを心に留めて聴いていただろうか。やはり新しい印象があった。別の曲のように聴いていた。星が羽ばたく。鳥が羽ばたく。聴いたことのない音の広がりだった。

 続いて「supernova」が始まる。数年前とは比べ物にならないほど喉のコンディションが安定しているとはいえ、さすがに後半戦ともなると声がわずかにかすれて来る。しかし少しも衰えているものはない。しかしそれにしてもこの調子の良さは5年前には望むべくもなかった。医学の進歩である。

 この曲は歌詞をやはり変えていた。「君を忘れた後で 思い知るんだ」という一節、「本当のありがとうはありがとうじゃ足りないんだ でも、」という一言がこんなにも唄を強くする。

 だがやはりオーディエンスの合唱は耐えられない。悪いがバンドと自分の間にどんな他者も差しはさみたくないんだ。それにBOCの唄は藤原以外の人間が唄い得るものでもないはずだろう。藤原は耳に手を当てて上体を傾けた。もう合唱や手拍子をやめさせたりはしてくれないんだな。そりゃあ「Title of mine」と「supernova」では話が違うのは分かる。でもな。




  1. 2012/04/22(日) 11:54:17|
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