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星と補陀落

 雨が降るので夕星が見えない。夜は『Mouth to Mouse』を聴いて曇り空をどっぷりと水で洗い流して眠る。あのアルバムは洗濯機みたいな音像なんだ。コインランドリーの窓付きの洗濯機を覗き込んでいるような感じだ。泡と水が渦巻いて、後には清潔な匂いだけが残る。まあそれはいい。何にしろ起きればまた土砂降りだ。

 気付けば無意識のうちに必死になってかさぶたを作ろうとしている。まあそれは大層なかさぶたなんだが、唐突にずる剥けたりもする。かさぶたよ、そこは守らなくていいんだ。そこは膝小僧じゃないからな。。。ばっくり傷口を開けたままではいられないのか。でもそのうちそのかさぶたすら消えるだろう。だから時々はかさぶたをずる剥いて抵抗しておこう。だがいつまで剥けるんだろうか。

 初めて宵の明星を見上げてから、あのくらいの時間に外出する時は必ず空の頂近くに星を探すようになった。大体そんな時は憂鬱な用事なんだが。だからこそ探す。本当に他の人間に見えているんだろうかと思うほど誰も空を見上げたりなんかしない。だったらあの星は小生がもらってもいいか。

 夕方、バイトの用で家を出たらそれまでぐずついていた癖に雲は細かく散っていた。空の縁が橙色だ。どうせ見えないんだろうと思っていたらあの星は雲の隙間からしっかり顔を出していた。小さいくせにぴかぴか立派に光っている。少し誇らしげにすら見えた。ここ数日は見えなかった癖に今日に限って偉そうな光り方をしやがって腹の立つ星である。用事は幾分気が重かったが小生は幾分マシな気分で自転車を漕いだ。

 あの星の光るのは西の空、おそらく楽園はそちらにある。いつかそこへ向かって船出する日も来るだろう。いつかは分からないが必ず来るのだろう。眼鏡は曇って視界は白く靄がかっている。街灯のひとつひとつに虹の輪が掛かる。大分暖かくなってきたのでやるせない。



  1. 2012/03/24(土) 23:48:20|
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