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2012.3.1 strangers in the night at 渋谷 CLUB QUATTRO その1

 今回はライブの前後が忙しくなかったのでじっくり書けた。あまりにいいライブだったので5000字を超えてしまった。ほぼ一日かけたが書いていて楽しかったな。考えてみればツアーの初日であるので、少し空気を読んで曲名と新曲の歌詞を白くしてみた。それでも曲によっては分かってしまう部分もあると思うのでそのあたりは各自で頑張ってもらいたい。伏せた箇所を読みたい場合は選択して反転させてもらえばよい。

追記:ツアーが終わったので曲名は黒に戻した。






 ステージの上の楽器はほとんど見えなかったが上手に置かれた鍵盤がローランドだったので、先攻がメレンゲなのは間違いなかったがまだ諦めきれないでいた。だが、ローディーが持ち上げたギターが蒼いテレキャスだったのでいい加減諦めた。ローディーが18:40ごろから出て来たのでもしやと思ったが、マジでほぼ時間通りの時刻で音と客電が落ちた。

 アコギと笛の音が印象的なSEが鳴り響き、下手からメンバーが現れる。サポートは皆川神と達身だ。皆川神はレミオが活動休止になったのとYUKIのツアーが10月からなのでおそらく上半期はメレンゲのサポートをメインでしてくれるはずである。タケシタはこの間と同じ水玉のシャツ、クボンゲはベージュのニットのカーディガンと黒に栗色のリボンのハットだった。帽子、新調したのか。茶色のは鍔が真っ直ぐだったが、これは少し反っている。ここのところ割と服装がまともである。よいことである。何もファッションの珍妙さでフジと張り合わなくていいんじゃないか。と思ったらクボンゲはまたボタンのいっぱいついた珍妙なジーンズを穿いていた。渋公のアレである。マジか…… 思わず空を仰いだ。残念だ…… 小生、大変遺憾である…… 

 一曲目は「旅人」だった。イントロの轟音の中、クボが「ようこそ!」と声を上げる。明るい照明でギターのペグが光る。白目が光を跳ね返す。眼球は水分が多いから当たり前だ。人の身体もこんな風に光るんだよな。クボンゲは上手から下手まで視線を行ったり来たりさせている。目が悪いくせに何を観ているんだろうと思ったが、どうも緊張しているようだった。最近はライブ中よく無意味にニヤニヤしているが、それもほとんどない。

 歌詞は「迎えに行くよ お待たせ」と変えていた。前回のライブの覚え書きでは書き落としたが、あの時は音源の通りに歌っていたのが引っかかっていた。絶対にこっちの方がいいよな。「あなたの街の方 あなたのもとへと行こう」というところでオーディエンスを上手から下手まで指差す。

 間髪入れずに「ムーンライト」が始まる。今日のクボンゲは半ベソをかいているような顔だった。だがだからこそ声が張り詰めていく。目の動きは少し落ち着いてきた。正面から上手の方に向かい、正面に戻る。上手に居るのはもちろん皆川神である。声もよく張り詰めている中でこの美しい鍵盤が素晴らしかった。

 ほとんど間を作ることなく、クボンゲが皆川神とヤマザキの方を向いてカウントする。三曲目は「きらめく世界」だ。皆川神の鍵盤で大分エレクトロっぽさが増している気がする。サビは割と叩きつけるように歌ってしまうことが多い気がするが、今回は張り詰めていて鋭かった。

 この三曲はタケシタもキレキレだった。タケシタはゴーイングとのスプリットツアーということで個人的な思い入れが非常に大きいはずだが、確かにアグレッシブでかっこよかった。


クボ:今日はゴーイングとのツアーの、初めて、始めの日でありまして。すごく楽しみにしてたんですけど、楽しんでってください!

(拍手が起こる)

クボ:あのね、もうね。。。今日はホントにほとんど寝てないんですよ。。笑 (笑いが起こる) なんかすることとかいっぱいあるから。。。(ニヤニヤしながら)この後もいろいろあるし!笑 (振り返ってタケシタを観る。タケシタ、笑顔でうなづく。)


 クボンゲはギターを黒いアコギに持ち替えた。軽く鳴らしたコードで既にもう次に始まる曲が分かる。


クボ:せっかく盛り上げたけど、ちょっとしっとりした曲をやります。。笑 


 「タイムマシーンについて」だ。最近は割に声を張らずに柔らかく歌うことが多かったが、今回はすぐに感情を孕んで張り詰める。優しい声なんかいくらでもいる。クボンゲの声が素晴らしいのはあれだけ細い声なのに溜め込んだ感情をぶちまける時、あれだけ強く鋭く聴いている人間の心をぶち抜くからである。大サビは圧巻だった。

 皆川神の真珠の粒のようなシンセの音がポロポロとこぼれる。知っている。これはあれだ…… 皆川神の鍵盤で聴くのは初めてだった。「underworld」である。一時期結構やっていたので最近はあまりやらなくなっていたが、正直ずっと聴きたかった。しかしクボンゲは本当に泣き顔である。悲しそうな顔というか、泣いているんじゃないかと思うような顔である。こんなに声を張れるんだったらいくらでも泣いてくれて構わないが。二番のAメロの後、一気に加速する。漂う音像が急速に形を変えていく。これをパッケージできたら最高なのにな。3枚くらい買うから、最高のクオリティーのDVDを出してくれないか…… 頼む。

 その後、ギターを蒼いテレキャスに持ち替える。「願い事」だ。シンセの音が揺らぎ、緑の照明が仄暗く淀む。歌い出すクボの顔には表情がなかった。真顔なのだ。サビが来る頃にはもう半ベソ顔だったが、今回のクボは間違いなく本気だった。そのことに少なからず衝撃を受ける。真紅の照明がどっぷり視界を染め上げたのはこの曲だっただろうか。何故かそれがひどく印象に残っている。

 クボンゲとゴーイング河野が対談で結構ドラムの話をしていたので、ドラムに注意して聴いていたのだが、例えば同じドラマーでもストレイテナーのナカヤマシンペイは制御不能のバーサーカーであるが、ヤマザキのドラムはまるで飼い馴らされた忠実な野犬か猟犬のようだと思った。野性は全く失ってはいないが主人と強い信頼で結ばれているので暴走することはなく、その型にはまらない身体能力を活かしながら配慮に富みしっかりと寄り添うようである。ヤマザキ本来の持ち味としてはそのパワフルさがあると思うんだが、このしなやかさはクボンゲの嗜好だろうな。結構好きだ。


クボ:メレンゲとゴーイングは。。。似てる世界を持ってるんだけど、でも似てないトコも結構あって。。。。素生は太ってるし。 (オーディエンスの間にざわめきが走る) そこは勝ってる。笑 でもキャラが立ってないから、、そこは負けてる。。笑 (ざわめく) 


 結局それって全部見た目の話じゃないか? クボケンジ、今日の名言は以上である。


クボ:あと、私事なんですけど。。。。私事っていうかメレンゲごとなんですけど。。。6月の。。。。(タケシタを観る)

タケシタ:6月2日だね。笑 

クボ:6月の2日に、日比谷やお、日比谷の野外音楽堂でワンマンライブやります! ありがとうございます! (拍手が起こる) 


 クボンゲは嬉しそうだが恥ずかしそうでもある。


クボ:それに合わせて、、、間に合うかちょっと分かんないんですけど、5月30日に。アルバム出します! 


 確かにこのペースだと結構キツそうだよな。ツアーもあるし、本当に合間を縫ってレコーディングという感じなんだろうな。だがしかし、久しぶりのフルアルバムである。楽しみでしかない。

 しかし今回は久しぶりにクボンゲがフリーズしまくっているのを観てかなり面白かったのだが、どこでフリーズしていたのかはよく覚えていない。まあいつものように話の最中に唐突に喋りかけた格好のまま硬直するクボンゲと、それを保護者のような慈愛に満ちた顔で見守るタケシタという恒例の光景が幾度かあったという訳である。


クボ:今日は新曲を。2曲やろうと思うんですけど。。。。(はにかむ) 聴いてください。


 クボはタイトルを言わなかった。ギターを置き、上手側の傍らにセッティングされたシンセに向かう。これが新調したシンセか。ローランドである。多分テルミンみたいなパッドがついているんだろう。シンセの左端で赤く光るパッドの上で、近づけた手をゆっくり離していく。光量を抑えたステージの上で2台のシンセが絡み合う。「フィナーレ」はもっとダンサブルだったが、こっちはもっと静的なエレクトロだ。アンダーワールドをもっとアンビエントっぽくしたような感じかもしれない。アンダーワールドなんかより絶対こっちの方がいいが。


午前3時 でもまだ眠れないんだ
東京は美しい街だな
僕の瞳の光の(     )


 Aメロはこんな感じだっただろうか…… Aメロを歌い終わるとクボンゲは視線を落としながら正面のマイクに向き直った。空の手でマイクを握り締め泣きそうな顔で歌う。Bメロは微かにしか覚えていないがサビはよく覚えている。


僕はメリーゴーランド
いつだってメリーゴーランド


 全てを振り絞るようにして歌う。それは凄まじかった。ディレイを本当に上手く使っていた。タイトルは言わなかったけれども、「メリーゴーランド」とかなんだろうな。同じ「メリーゴーランド」でもフジとは全く違う。悲しみが静かにたゆたっていた。「君は本当にいないのか?」という歌詞があって胸を突かれたな…… 心の中には確かに何も存在しない場所がある。そこにかつてはあるものが在ったがこれからは永劫存在しない。

 間奏でシンセの方を向いた顔が本当にあと一秒で泣き出す瞬間の顔だったので若干動揺した。だが今回はそんな顔を何度か観たな。正直に言って小生は純粋にオーディエンスなので、クボが一生そういう顔をしていてくれればいいと思っている。寿命を縮めない程度に。いつもニコニコしている必要はないだろう。時々笑えばいい。そしてそれは間違っていることなんだろうか? ただ、クボも自分がそうあるべきだと強く自覚しているのは確かだ。それは果たして悲しいことなのか? だが芸術家の業はそんなもんだろう。

 曲が終わった後の拍手は一際大きかった。クボンゲが蒼いテレキャスを持ち、皆川神がスペーシーなシンセのサウンドをひねり出す。これはもちろん分かる。「バンドワゴン」だ。今年に入ってからずっと聴きたいと思っていた。ここ数日、頭の中でずっと流れていたのもこの曲だった。


夢見た夢の 続きの続きの 
ハッピーエンドのストーリーを目指す


 出だしの歌詞が決意に満ちて響いた。今回は割によく聴き取れて、「アイドリングはエイトビート」だとか「寒くたって平気さ」という歌詞が印象に残っている。一番印象に残っているのはサビだが。サビは三回くらいあるが、こんな風に流れる。



虹色の(  ) おなか空かして
でも泣いてなんかいられない
君に会いたくて プレゼント持って
星を眺めているよ

お礼が言いたくて お弁当持って
星を眺めているよ

君に会いたくて 寝巻のままで
ハッピーエンドを持って行くよ



 歌詞が少し変わっている気がする。このバンドワゴンは空を行くバンドワゴンなんだろうなとふと思った。この曲ではいくらかクボンゲの表情も笑みに近いものが浮かんだりしたな。

 だが笑顔になったのは次の「ラララ」からである。イントロではクボンゲと達身が向かい合ってギターを掻き毟る。達身、渋いぜ。達身のギターが荒っぽい分、皆川神の鍵盤が細やかなのでバランスが取れている。「ラララ」はタケシタがすごかったな。気付いたら上手の方に居て、アウトロでピックを投げて下手に戻って行った。ピックなんか投げるもんだからこれで終わりなのかと一瞬思ってしまった。しかしクボンゲもなぜかライトハンドで弾いてたな。クボンゲがライトハンドである。わが目を疑ったが多分絶対あれは幻覚じゃない。不思議な光景だった。

 もちろんこれで終わりということはなく、「アルカディア」が始まる。心の底から涙の流れるような「アルカディア」だった。抑えられたAメロ・Bメロでさえ時折声が張り詰める。メレンゲの曲というのは本質的に誰も歌えない曲である。クボにしか歌えない曲なのだ。あんなに弱いのにあんなに強いあの声だけを活かすメロに、あの声でしか表現できない感情が乗る。


クボ:ありがとうございました! また後で出てくるかもしれないんで!笑 


 という一言から間髪入れずに重いギターのリフが振り落とされる。「火の鳥」だ。この曲が本当に聴きたかった。ストロークの一音一音が、スティックの打ち下ろされる一撃一撃が重い。やはりこの曲の空気感は他のどの曲とも違うんだよな。静かに思い詰めるような緊張感だ。それは少し殺気にも似ているような気がする。アウトロで音源では渦巻いて立ち昇っていくような山内のギターが聴けるのに対し、達身のリフは音数も少なくぶっきらぼうで大味だが渋くて男らしく、格好いい。

 達身マジでカッコいいな。前半はほとんど見えなかったものの終盤は割と見えるようになったんだが、唇の端を曲げてフライングVを弾く姿にぐっと来た。ぐっと来つつもやっぱり新福菜館は分かるなと思った。







SET LIST

1. 旅人
2. ムーンライト
3. きらめく世界

4. タイムマシーンについて
5. underworld
6. 願い事

7. 新曲
8. バンドワゴン
9. ラララ
10. アルカディア
11. 火の鳥





  1. 2012/03/04(日) 15:11:07|
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