inkblot

Snatches01

ラクタの街。ここはそれ以上でもそれ以下でもない場所だ。膨大な質と量の金属廃棄物の山の中に、石畳の道が、レンガ造りの古い街並みが埋もれていた。

 使い込まれた旧型の工業用ロボットから、ありきたりな量販モデルのアンドロイドのスクラップまで大体何でもある。

 そういった鉄のカタマリにわずかに紛れた有機物が、工業油の臭いに混ざって、何か酔わせるような臭気を醸していた。それがこの街のにおいだった。

 街のそこここにある廃品再生工場の煙突からは絶えず、ミルクティー色の濁った煙が吐き出されていて、街を上空で覆っていたもんだから、人々は皆顔をほとんど覆ってしまうようなマスクを手放すことが出来ない。
 
 ひどい街だと言う人もいたけど、僕はこの街が嫌いじゃない。ガラクタに埋もれているおかげで、街の人々(もちろん僕もだ)は仕事にありつけている訳だし、大分前の戦争でもずいぶん儲けたのだ。



 これが僕らの街だった。僕らはここで生まれ、そして多分ここで死ぬ。僕らもまた、それ以上でもそれ以下でもない存在だった。




  1. 2010/03/22(月) 15:30:44|
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