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2011.10.29 『おはなしごほん』発売記念サイン会 at オリオン書房ノルテ店

 イラストレーターの片山若子と笹井一個が画集を出す記念として作った同人誌が『おはなしごほん』である。それによく仕事をする二人の作家、北山猛邦と佐藤友哉が寄稿した、同人誌というにはあまりにクオリティの高い絵本である。そのサイン会に主役の二人だけでなく作家も来るというので、北山さんが見たくて行って来た。帰って来て読書メーターでオリジナル登録しておいた。同人誌だから勝手に登録されないんだよな。著者の順番は完全に個人的な愛の差である。

 立川はむちゃくちゃ遠かった。「あそこはほとんど埼玉だ」ときいていたので、そうかと思っていたら駅の人の流れがすごかったので早くも心が折れた。幸いにしてノルテ店にはすぐにたどり着けたが、あの狭い範囲にオリオン書房が一体いくつあるんだと思った。よくやっていけるな。

 店内は駅ビルのワンフロアで結構充実していた。都会の本屋が珍しいのでしばらくぶらぶら見物したが、北山さんの自筆のポップが笑えた。ペンギンかわいいな、おい。知らない人のために説明しておくと、ペンギンは北山さんのトレードマークなのである。音野順シリーズでは、ほとんどの登場人物の名前はペンギンからきている。ちなみに特に上手い絵ではない。

 『おはなしごほん』は電話で予約したが、受け取りがどこなのかよく分からない。レジにいる店員に訊いたら丁寧に案内してくれた。都会の書店にはこんなナイスミドルな書店員がいるのかッ! カルチャーショックであった。

 無事本を受け取ってラウンジスペースに向かうとそこには既にサイン会を待つ列ができていた。ふむ・・・やはり音楽関係とは大分人種が違うな。まあ全体的にぱっとしないんだが、女性はなんだか地味で動きが鈍そうな感じで男性は細くて神経質そうなのが多かった。よかった。この中なら小生もあまり浮かない。ただミステリ読みとは仲良くなれなそうだなとは思った。ずぼらで汚らしい小生はすぐに嫌われるだろう。

 整理券には名前とメッセージの欄があり、立ったまま書く。どいつもこいつも本を開いて読んでいるので、家に帰ってからじっくり読むつもりだったが一応ざっと読んでから書いた。ふと目を上げると、隣にいる男が買ったばかりらしい本を開いている。本屋が巻いた薄いカバーから『メルカトルかく語りき』というタイトルが透けて見えた。

 しばらくするとラウンジスペースが開放された。割に並んだのが早かったので、あっという間に順番は回って来る。北山さんは灰色のジャケットに棒タイの控えめなトロンプルイユのように赤系のチェックのテープが縫いつけられた白いシャツを着ている。浅黒い肌に真っ黒なさらさらとした髪で、眼鏡は掛けていない。盛岡出身なのに色黒なのは高校時代テニスに明け暮れていたからだろう。鋭く細い目が心なしか落ちつかなげに周囲を見ている。が、決して正面は見ない。小生には分かった……これは真性の人見知りである。小生の前の男が「ファウストの連載を単行本化していただきたい」といったようなことを熱心に早口で話している。ファンの言葉に答える声は穏やかで丁寧だが淡々としていた。

 目が細いとぱっと見では思ったが、他の人と比べて特に細い訳ではない。普通である。では何故細いと思ったのかということに思い至って小生は非常に困惑した。インディーズ時代のフジファブリック志村にどことなく似ている・・・ あんなに変態臭くはないし、鼻は鷲鼻に近くてそれほど似ていないはずなのだが。インディーズ時代の顔が黒ずんで見えるフジ志村と作家の読書道の写真を足して二で割った感じだと思った。とりあえず、どっかで思い切り頭でも打ったのではないかとひたすら自分の脳みその心配をした。まあそういうことを書いておいた方がファンが増えるかもしれん。

 まずは宛名を書いてくれるのだが、早速一文字目でペンが宙をさまよった。・・・どうやら書き順が分からないらしい。三文字目でもやはりペンが止まった。大丈夫か。しかし字自体は結構綺麗な筆跡である。ついで裏表紙側の見返しの、佐藤友哉のサインの隣にペンギンを書き始める。ぐっと輪郭を描いてから、細かい部分を慎重に描いていく。一匹描いてから、隣に小ぶりのをもう一匹描いた。ちなみに前の人は横を向いたのが一匹だったな。その後、さらさらと淀みなく自分の名前をサインする。そうしてこちらに丁寧に一礼した。ただこちらは見ていないので、たとえばもし仮に一時間後にばったり出くわすなどということがあっても、向こうは絶対に分からないだろう。名前を名乗ったらもしかするかもしれないが。

 次の人にサインしているところをぼんやりと見る。佐藤友哉のサインが稚拙なウサギの絵の傍らに「ゆやたん」と書かれたものだったので、北山さんは笑っていた。そしてその隣にいたずらそうな顔で余白いっぱいに大きくペンギンを描く。眼鏡で地味な女性書店員に「サインはどこに書くの」とたしなめられていたが、答えないで相変わらずニヤニヤしていた。

 北山さんの隣には片山若子が座っていた。赤紫の服を着て髪を一つに束ねた、普通の女性である。年頃は見たところざっと30代後半から40代といった感じだ。その更に隣の笹井一個も同じか少し若いくらいの年格好で、こちらはショートカットだった。「今日はありがとうございます」と丁寧に一礼されたので、こちらも一礼を返す。蒼い色鉛筆を手に取り、まずサインをしてくれたがそこで手が止まる。しばらくうなり、隣の笹井さんに「何描いたらいいと思う?」と助けを求めた。「栗。栗描いたら?」とすすめられて、うさぎにトレードマークの栗を描く。続いて笹井さんもこちらに一礼した。そしてオレンジの色鉛筆でサインとトレードマークの鳥のようなキャラクターが正座しているところを描いてくれた。

 全部で10分とかからずにサイン会は終わった。再び店内をぶらつく気力もなかったので真っ直ぐ帰った。しかし寒いな。





  1. 2011/11/10(木) 23:42:02|
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