inkblot

The Grassy Grave


 界には光があふれていました。空は途方もなく遠く蒼く広がっていて、手を伸ばしても到底届くとは思えません。あたり一面はもうすっかり緑です。そうして心地のよい風がどこまでも柔らかな草々を軽やかな音を立てながらなでていくのです。

 美しい光景でした。気が抜けてしまうくらい美しい景色でした。

 僕は原っぱに投げ出していた体を起こしました。春は別れの季節だって言うけど、なんだか今日はほんとうにそんなさびしい抜けがらみたいな感じがします。今までずっと眺めていた空には、結局ひとつも雲を見つけられませんでした。

 腫れぼったい目をこすりながら僕は穴のあいた心で丘を登っていきます。暖かな陽気に頭は少しぼんやりしているみたいだ……

 丘の上には十字架がひとつだけあります。それは僕の友達の……僕は後ろを振り返りました。たくさんの人が泣きながら花束を片手に草原を歩いてくるのが見えます。僕は十字架の根元に持ってきた白い花をそっと置きました。真っ白な十字架はいつまで経ってもなんだか幻みたいだ……穴のあいた心をさわるとまだ痛かった。

「どうせ気休めにすぎないってことはわかってるんだ……でもね、こんな目じるしの日にはいつもより君に近づけるんじゃないかって思うんだよ……手を伸ばしたいんだよ……」

 厳しい冬を抜けて、十字架の丘はすっかり草に覆われています。空に目をやると、一羽の蒼い鳥が羽ばたいているのがにじんで見えました。







  1. 2011/01/24(月) 11:54:01|
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