inkblot

we are the sunset party (and break fuckin' christmas!).


 からくだらないクリスマスプレゼントをひとつ。本当はPDFを貼り付けたかったのだが、どうもそうする方法を見つけられなかった。PDFがほしい人は言ってくださいよ。。。面倒だけれども。でもゴシックで読まれるのも微妙だしな。

世界観はetudeというところに書き捨てた小話のものを使いまわした。なんか見覚えのある名前が色々と出てくるのは、使いまわし癖があるからです。つまらなかったら素直にコメント欄でこきおろせばいいぞ、諸君。。。

 まあとりあえず、そういうわけで。。。





ウィー・アー・ザ・サンセット・パーティー




 キミはデミアンを知ってるの? デミアンはボクの大親友です。
 おおきな目をして、いつもじっとこっちを見てる。引っ込み思案だけど負けず嫌いで、一見冷たいけど一度なついたらどこまでもついてくる。つかめないやつだけど、年上のボクからしたらそんなトコもかわいいかなと思えました。

 あいつはもちろん音楽家としてボクらにすごい景色をいくつも見せてくれたけど、でもボクが彼を好きな理由はやっぱり一緒に居て楽しかったからで、それは彼の才能のおかげなんかじゃない。あいつは真面目で頑張り屋だから案額に対してもすぐに根を詰めちゃうのです。それが時々とてもつらそうに見えたから、ボクは心配でした。ボクなんかは何をしても冴えなくて、全部から逃げ出してたどり着いた唯一の逃げ場で楽しいことが音楽だったのです。だから、そういうのとデミアンのとが違うのは見ていて分かりました。でも、あいつは音楽がやっぱり好きなんだと思う。それだけは大丈夫。

 こういうのは相対化して成果を見ることができないから、落ちる時はとことん落ちるけどその代わりすごくやりがいはあります。好きなことをして生活が成り立つのはやっぱり幸せ。悩むことがあっても、それでも選びたかった今なのです。それはきっと彼も同じ。

 ボクらはほんとにいつも一緒なんです! 悪いこともたくさんしました。あいつは学校ではいい子ぶってるけど、ほんとはとても悪いやつなのです。前に倉庫から爆竹をたくさん盗んで広場で鳴らしたのはボクらでした。
あの時はたいへんでした。罰として時計塔の最上階の大昔に牢として使われていたというところに閉じ込められたのです。……怖かった! とても高いところなのでひっきりなしに吹く風が悪魔みたいな声を上げるのです。幽霊が出るといううわさもありました。先生たちが許してくれるまで、ボクらは蒼い顔でふるえながら抱きあっていました。でもそんなことはほかの友達にバレたら沽券にかかわるので誰にも言いません。時計塔でのことは二人だけの秘密……なのでボクらは時計塔の幽霊に屈しなかった英雄です。

 ともかくあれ以来、悪いことはバレないようにやらなくてはいけないということを学んだので抜かりはなかったよ。たまにはバレたけど……他にも、食堂のテーブルクロスを全部赤から青に変えたり、廊下の石造りの壁に自分の名前を刻むのに、どちらがより高いところの石に刻めるかを競ったりもしました。「チェスターになんか負けないよ」ってデミアンは強情そうに眼を光らせたけど、これは背の高いボクの勝ちです。デミアンは悔しそうに「『のっぽのチェスター』なんだからズルい」と文句を言いましたが、ボクだって好きで大きいわけじゃないので困ります。大体、ボクはデミアンより大きいけど、一フィートも大きいわけじゃなくてせいぜい六インチくらい大きいだけだ。それでも誰かの前にいたりすると、「前が見えない」と怒られたりするので、ボクはじぶんの背が恥ずかしくてしかたがありません。できるだけ目立ちたくはないのに、大きいと目立ってしまうんだ! なのでボクの猫背は誰かがボクの背をからかうたびにひどくなっていくのです。でもデミアンは「背が高いと頼もしくていいなと思うよ」と言ってくれることもありました。あれで優しいところもあるのです。

 怒ったり笑ったり優しかったりあいつは忙しいやつだけど、よくふっとさびしそうな顔をする。それがずっと気になっていました。でもそれがボクにはどうしようもないことなのも何となくわかっていました。……でもほんとうにできることはなかったのかな。でもこれは考えても分かることではありません。結局ボクは彼に何か出来たのかな……そう堂々めぐりに考えるのが精いっぱいでした。

 なんだかんだ言って、彼はボクを頼りにしてくれてたと思うのです。ボクらは学校に通うために家族から離れて暮らしています。そんな中でボクらは家族みたいなものでした。ボクは彼のことを弟みたいに思っていました。

 だから突然彼ががいなくなってボクは訳が分からないのです。ボクが笑う時にはその隣に大抵あいつの得意そうな顔や嬉しそうな顔、ムスッとした顔がありました。毎日の中であいつの存在の占める割合がとても大きかったから、今でも笑えるけどいつ何で笑ったらいいのか分かりません。

 ボクは大親友を亡くしました。今でもひょっこりドアを開けてニヤニヤしながら入って来るんじゃないかと思います。失ったものが大きすぎてその空っぽがいやに目につくのです。だからボクは何回もそこを覗き込んでしまいます。多分絶対、この空っぽは埋まりません。それに埋めたくもありません。ただボクは大親友を亡くしました。それだけです。


でもそれだけで涙が止まらないよ! 季節がめぐって街が聖夜の飾り付けを始めるころになると、どうしても気持ちはあの時に戻ってしまうのです。どうしたらいいんだろう……? ボクはじぶんの部屋に閉じこもってじっとしていました。動いたら、悲しみで体が破裂しそうでした。もう何日もそうしているから、日付も時間も分かりません。ずっと分からないほうがいいな……

 いったいボクはどれくらい泣いたんだろう? 締め切られた部屋にはどんどん涙が溜まっていって、とうとうボクの部屋は大きな水槽みたくなりました。これがもし記憶のプールなら、どこまでも泳いでいってまたデミアンに会えるかな……

 すると、部屋のドアに穴が開きました。そこから水がどんどん出て行きます。水がほとんど引いたころ、やっとドアが開きました。ドアの向こうにはひょとひょろとして小柄な、キノコみたいな髪型の男の子が立っています。キキでした。

「やあキキ! キミにナイフを使える腕力があるなんて思ってなかったよ……!」

 キキはボクの言葉をきいてぎこちなく微笑みました。彼はいつもなんだかぎこちなく笑います。彼の動きはなんとなくぎこちない。でもボクにはなんとなく気持ちがわかります。

「万能ナイフだからね。腕力はいらないよ」

 キキはほんとに変わったやつです!

「キミって不思議なやつだね……」

「そんなことないよ……ところでチェスター。もうすぐ『ひとめぐりの日』が来るね……」

 キキはボソボソとそんなことを言いました。ボクはおなかの中のおもりをつっこまれたような気分になりました。

「君はわかんないかもしれないけど、今日は二三日なんだよ。みんな心配してるんだ、君のこと……でもさ、チェスター」

 キキはボクを見て言いました。

「デミアンのことを思うのなら、僕たちも混ぜてほしいんだ。デミアンの一番の親友は君だけど、もちろん僕たちだって彼のことは大好きだからね」

 キキは華奢な手をボクに差し出しました。

「チェスター、一緒にクリスマスをぶっつぶそう……デミアンを記念するのに、クリスマスなんて邪魔だからね。それに彼、たしかあんまりクリスマスが好きじゃなかったよ……広場を占拠するんだ。そうしてみんなでデミアンのことだけ考えよう……」

 ……デミアンとボクはこんなに思ってくれる仲間がいっぱい居て幸せ者です。ボクは照れ笑いをしながらキキの手を握りました。



つづく


  1. 2010/12/23(木) 06:14:19|
  2. 短編
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