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キシダ君観察記5


11月24日

 先週の教訓を活かして、2限のブーメランで寒い思いをしないためにジャージを着ないで厚着で授業に臨んだところ、逆に暑くてヘコんだ。見よ、我が愛器の描く軌跡を! 美しい10mの直線・・・グラウンドにおけるブーメランの掘削力に関するデータは微妙に集まらない。運動部のスパイクで掘り返された地面が乾いてボコボコになって土くれが固まっているため、ブーメランの痕跡が分からないのである。期末のレポートはこれで行こうと思っていたのに・・・終わった。

 しかし、やたらめったら投げていたら風に乗っていくらか飛ぶようになった。最終的には90度も曲がるようになったぜ! この日は小テストがあったため練習時間は短かったのだが、その練習の最後の一投をした時であった。

 その瞬間、さっと一陣の風が吹いたのである。風に乗って我が愛器はグラウンドのフェンスを颯爽と超え、青い空、黄金色の雲のようなイチョウの梢の中へと消えた。それは一瞬のようでいてスローモーションのように緩慢な印象を与えた。。。

 「やべえ、今超飛んだ!」 私はその場で驚きと興奮で棒立ちになった! しばらくして、ブーメランがアスファルトに落ちる硬い音が聴こえる。や、しょうがないな、全く。のろのろとイチョウ並木まで出て行くと・・・・・・ない。あるのはイチョウの葉ばかり。あと銀杏。・・・ヤバいか? そばで銀杏を拾っていたおっさんに訊く。

「いやあ、見てないねえ。変わったブーメランだねえ。器用だねえ」

 そうっすよね。。。ちなみ左手に持っているのは星の鳥に似ているからというだけで作った装飾用である。親の取柄を受け継がなかったので、飛ばないブーメランである。それからも空しい捜索は続いた。。。

 
 最終的に、掃除のおじさんに訊いた後にとうとう諦めた。さらば、我が愛器。。私はこのイチョウの葉の金色の海のどこかで潰れた銀杏にまみれているであろう、愛器をしばしの間悼んだ。グラウンドに戻ると小テストは既に2週ばかり終わっていて、怒られた。しょうがないので予備のブーメラン(装飾用)でやった。美しい直線の軌道を描いていた。





 3限は友人が遅くなるというので、部室に寄らずに本校舎に直行した。・・・キシダ君はまだ来ていない。しばらくぼうっとしていると友人が来た。なんと、5限は休講らしい。残り2コマに俄然気合が入る。話が意外と盛り上がって、キシダ君が入ってきてもチラッと一瞥で話に戻った。ちなみにキシダ君は緑のパーカーである。

 その日の講義は主にロシア革命を中心としたかなり込み入った話でさっぱり内容は分からなかったのだが、教授の熱のこもった口調に授業が進むにつれて徐々に乗せられていき、いつの間にかすっかり熱くなっていた。授業が終わって、教養医学概論に向かう途中も友人と講義の感想を熱く語り合った。

「今日の授業よかったな!」
「内容さっぱりだったけど!」
「先生に惚れたわ!」

 その次の教養医学概論は肝移植の話だったのだが、医学部は我々をなめくさっているらしく中学生相手のような目新しいことの何一つない退屈な上に、臓器移植という将来性のない分野を執拗に正当化するだけの講義だったので、感想カードに悪口をみっしりと書いてやった。私は普段そんなに分量を書くことがないので友人に驚かれた。友よ、私は臓器移植にはちょっとうるさいのだ。。。

ん? そういえば他のことに気を取られていてキシダ君の観察を忘れていた。





11月25日

 2コマある授業がたまたま1コマで終わり、その後先生と話しこんでしまった。まあ、いつものパターンである。最初はたしかジョイスの話をしていたはずなのに、気づけば日本のお粗末な戦前の軍部の話になり、それが日本の文学賞に移り、最終的には先生のご出身であるT大の話に落ち着いた。

 T大には、「限りなく退学に近い卒業」というものがあるらしい。。「もうお前の顔見たくないから卒業」というやつである。ちなみにT大の教授会では「掃除の人がタンポポを抜いてしまうのでどうにかしてほしい」という議題が上るそうである。

 そして驚愕の事実が・・・! 先生の同期には幸○の科学のO川恭子がいるらしい。「就職先が出版社だったんだけどさ、○福の科学出版ってなんか宗教っぽいなと思ったらほんとにそうだった」そうである。今でも同窓で飲んだりする時には「木村(旧姓)が『愛と美と幸福の女神』はないよな。苦笑」という話になるそうである。「信者に刺される!」と先生は言ってたが、こんなところに書いている小生も刺される気がしてきた。。。

 あと先生は「木村は面接で延々と論文のスペルミスを教授に指摘されてた」とさらに暴露してくれたが、今日の話を母にしていたら「そんなにスペルミスがあるってことは辞書見ないで書いてるってことでしょう。相当頭いいわ」と言っていた。そりゃTだからね。。。というかそれを笑っていたうちの先生はその上を行っているということでは? ・・・笑えない。ちなみに先生は一浪しているが、それは数学が出来なかったからだそうである。出来ない次元が違う。



 先生は喋り出すと止まらない人で、私は人の話を聞くのが好きなクチである。そんな風に話は際限なく盛り上がり、先生と別れた後に時計を見ると少なくとも授業が終わってから3時間半が過ぎていた。・・・いつもは1時間くらいですよ。いい加減腹が減ったので遅い昼食を取ってから帰ることにした。

 食欲と(無駄な)知識欲を満たし、上機嫌で銀杏並木を歩いていた時であった。一台の自転車が私を追い抜いた。別に自転車自体は構内で特に珍しいものでもない。完全に追い抜かされた時、見るともなく見ていた私の目に不意にドドメ色のデイパックが飛び込んできた。

 キシダ君であった。

 キ、キシダ君が自転車に乗っている! ちなみに運動着姿である。自転車に乗っているということは自宅が大学の至近距離にあるということ、つまり地方出身者で1人暮らしをしているという可能性が極めて高い。。まあ、実家がこちらという可能性もあるが。。ん? 部の備品として自転車を持っている部活がないわけではないな。。。(例:文芸部) まあ、あまりないとも思うが。


 キシダ君は思いも寄らないようなところで、いつも奇妙な手がかりを残していく・・・・・・それでこそ、我が好敵手! 燃えるぜ、キシダ君よ! 来週は正攻法で行く。。。







  1. 2010/11/25(木) 19:53:19|
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