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フジファブリック presents フジフジ富士Q 16

 るりが去ると、本編は一応終了という形になった。暗く夜気が降りたコニファーの熱気はまだ去らずに残された時間が訪れるのを待っていた。しばらくして、その熱気を呑み込むように真っ白い光が膨れ上がる。

 現れた5人。その中でも山内総一郎、彼に何万という人々の視線が帯びる張りつめたような重たい透明な空気がまとわりつく。未だ主役の座を空白に残したまま、彼らは我々の先頭に立つ。


「せっかくなので今度出るアルバムの中から新曲をやりたいと思います」という金澤先生の前振りを受けて、

「『会いに』という曲を聴いてください」

 微笑みながらそう言う。私は彼の愛想笑いが好きじゃない。それに今日はいつも以上に下手くそだ。


 閃光とともにフジファブリックとしか言いようのないギターのリフが響く。正直かとをさんがこれほど良い詞を書くとは思っていなかった。でも不思議と違和感はなかった。全然余裕でフジファブリックだった。彼らは彼らにしか出来ない、最も正しく最も確実なやり方で志村に会おうとしていた。

 しかし山内総一郎、彼の担った役割の重さは計り知れなかった。彼の歌い方は、もちろん楽しそうなわけはなくだが必死というのとも違った。冷静に正確に、歌うという役割を全うしようとするような歌い方だった。

 私はその場にあって、何か祈るような気持ちだった。

 私は山内総一郎の歌を聴いてもちっとも嬉しくはない。ただ、そうなる以外の可能性を許さなかった現状にぞっとする。けれども三人の歌は何か言葉に出来ないような物凄い力で、轟音とともに闇を裂いた。その音は空間をひしゃげさせるように響いた。

 三人はそうして我々の先頭に立って旗を掲げたのだ。悲しみの中で逸早く立ち上がって、打ちひしがれている我々に進むべき道を示したのだ。その決意、痛みを私は想像できない。しかし、三人の歌は確かな力で志村に向かって手を伸ばした。そしてあるいは、彼に触れたかもしれない。

 私はその場にあって、何か祈るような気持ちだった。







SET LIST

フジファブリック  「会いに」










  1. 2010/11/19(金) 14:24:01|
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