inkblot

米澤先生の「概ねわたしの計画通り」な華麗なる経歴

 澤穂信(32歳 男性・独身)という小説家をご存知だろうか。

 料理とゲームに並々ならぬ関心を持ち、慇懃な受け答えと思わず持続時間を知りたくなるような完璧な作り笑顔の素敵な、年の割に大分落ち着いた青年である。

 岐阜県の炭鉱街で生まれ金沢大学文学部を卒業、その後2年間の書店員生活を経て、2001年に『氷菓』で第5回角川学園大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞してデビュー。その後、角川スニーカーの戦略ミスで辛酸を舐めたりしつつも『氷菓』から始まる「古典部シリーズ」は角川文庫の方で復刊され、『さよなら妖精』(東京創元社)、「小市民シリーズ」(東京創元社)などで着々と若い世代に浸透しているミステリ作家である。最近では「このミス」でも1位だったり、『インシテミル』が映画化されたりと大忙しである。ちなみに、彼のツイッターを見ているとなんかせつなくなるのは私だけではないはずだ。。

「わ、私だって暇なわけでは!(「蒟蒻畑」を隠しながら) RT @ma_itter: 鑑識作業は忙しそうですよ。 RT @honobu_yonezawa: なんだか多方向から名前を呼ばれた気がしてきょろきょろしてしまいましたが、ああなるほど、「相棒」放映中でしたか。」

 泣けてくる。


 彼の作風は一言で言うと、地味である。ぶっちゃけ角川学園大賞というのは主にライトノベルを対象とした賞であるし、上記の作品群は高校生くらいの登場人物の話だ。しかし、驚くほど・・・ライトさがない。常識の範囲を大きく逸脱したような設定は全くと言っていいほどないし、ミステリとはいっても人は死なない。ジャンルでいえばいわゆる「日常の謎」というやつである。

 登場人物たちはとても高校生とは思えないような語彙と教養を持っているし(あれは笑う)、ラノベなんて読まないだろ、いやむしろ憎んでいそうだと思えるような端正ではあるが激しく地味な文体がかえって特徴的である。

 どうした、米澤さん。大丈夫か、米澤さん。なぜ角川だったんだ、米澤さん。角川を狙った理由を訊かれて、「応募時はこれからはミステリ&ライトノベルのハイブリッドが最前線だゼ! と思ったからです。・・・残念なことに、戦線は縮小しました。」とか白々しいことを言っている米澤さんであるが、本当の理由を小生は知っている。あとどうしてバトロワフラグ立ちまくり(最近覚えた言い回し)なキャストでの映画化を許可したんだ、米澤さん。しかしそれも小生は知っている。。

 米澤穂信。彼のバックボーンには若竹七海、加納朋子、北村薫、山田風太郎、久生十蘭、泡坂妻夫など、「日常の謎」の代表的作家やかなり渋い作風を特徴とする、次代の「文豪」たちとでも呼ぶべき作家とがいる。中でも多大な影響を受けているのは泡坂だろう。東京生まれで紋章上絵師という職人でありながら、手品と小説をものにした泡坂はまさに「最後の江戸っ子」と呼ぶべき人物で、その作風は手品そのもののように鮮やかなトリック、そして味わい深い情緒を湛えた、粋なものである。

 泡坂に私淑しているがゆえに、米澤さんは実に渋い文章を持ち味として持っている。それは『追想五断章』を読めば明らかである。彼の本領は「古典部」や「小市民」ではない。彼の最も得意とするものは『追想五断章』のような小説である。ではなぜああいった分野に敢えて飛び込むのか。

 それは彼の本来の文体では照準に入ってくる年齢層が、どうしても高くなってしまうということがある。彼の打ち出す主題というのは、ああ見えて非常に熱い。いつ見ても作り笑いで、自らの知識をひけらかしているようで腹立つやつに見えるが、あれでなかなかむっつり情熱であるのだ。分かりやすいところで言えば「ナイフを失われた思い出の中に」でも読めばいい。彼はそれを誰に向かって言いたいのかといえば、それはもっと若い世代なのだ。中高生、あるいは大学生。。。しかし、普通に書いたのでは彼の最も望んでいる読者は得られない。だからこそのライトノベル、だからこそのイラストレーター・片山若子の起用(「小市民シリーズ」)なのである。

 「さよなら妖精」、あのメッセージ性の強い青春小説は「敢えてライトノベル読者層を狙って書いた」のだと、彼は繰り返し述べている。知名度が出てくるまでは低年齢層に迎合した青春小説を書き、ゆくゆくは自らの文体にあった小説にシフトしていく。これが彼のシナリオじゃないか。『インシテミル』の映画化も、それがどんな出来であれ、大歓迎のはずである。若者の間でさらなる知名度の高まりが期待できるからである。実際、本屋に行けば嫌でも文庫本が平積みされているのが目につく。

 『追想五断章』は、そろそろ二足わらじもアリだろうという考えなのだろうな。あれを読んだ時、「これを待っていた」と思ったのは私だけではないはずである。もっと言えば、「古典部」も「小市民」も割とそう遠くない未来に終わることが予想される時間の流れ方なんだよな。高校卒業でシリーズに一区切つくだろうとか、タイトルの付け方から普通に考えれば4作で終わるだろうとか。

 方法としては少し異なるが、伊坂幸太郎も根本的には似たようなものかもしれんが。。うむ。とりあえず意外と米澤さんはいいやつである。米澤さんをよろしく。色々書きすぎたので、米澤さんに暗がりで狙撃されそうで怖い。実は『折れた竜骨』が値が張るので、買うのを躊躇っているとかいったことはなくもないのだ、うむ。いや、マジで狙撃しないでください。和弓はデカいので目立ちますよ。。。

 5限が迫っているので、後で書き直す!







・・・めんどくさいので書き直しはあまりしな少ししかしなかった。

とりあえず今はエーコの最近出たやつがほしい。

外国文学は疎いんだが、中世ヨーロッパはいいよな。






  1. 2010/11/15(月) 15:59:29|
  2. | トラックバック:0
  3. | コメント:2
<<タワレコに貢いだ一日 | ホーム | 廃盤は困る>>

コメント

とても魅力的な記事でした。
また遊びにきます。
ありがとうございます。
  1. 2010/12/29(水) 13:00:32 |
  2. URL |
  3. 職務経歴書の書き方の見本 #-
  4. [ 編集 ]

Re:

はあ。どうも。
しかし、とりあえずは履歴書よりも辞表の書き方を知りたいですね。苦笑
  1. 2010/12/30(木) 16:19:52 |
  2. URL |
  3. 北田斎 #-
  4. [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://kirschrot.blog40.fc2.com/tb.php/172-b8cef48f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)