inkblot

Confeito


「あの星が欲しいなあ」

 藍色の空を見上げて、アートがため息をつくように言った。

「そんなの無理だよ。あの星がある場所は、人の手が届くような所じゃないさ」

「そうかな」

「そうだよ」

 アートは首をかしげると、空から目を離して、足をブラブラさせながら自分の手のひらをじっくりと見た。

「でも僕、あれが欲しいんだ」

 もうこんな時間だから寝ぼけているのかもしれない。いつもはもっと聞き訳がいいのに、今夜のアートは随分粘っている。ニコデモは頭の後ろで手を組んだ。

「こんな話を知ってるか? 昔むかし、ある所にやっぱりお前みたいに星が欲しかった王様がいたんだ。
 王様はどうしても星を自分のものにしたかった。星を弓矢で射落とそうとか色々したんだけど、どれも失敗した。それで王様は塔を作るんだ。高い高い塔をだよ。王様はその塔の上から星に手を伸ばした。その瞬間、塔は崩れて王様はまっ逆様に落ちていった。その後王様がどうなったかは忘れたよ。
でも、最後まで王様は星を手に入れられなかったよ」

 これで諦めるだろうと思いながらニコデモが言葉を切ると、アートはゆっくりと首を振った。

「ニコ、あれは星じゃないんだよ。金平糖さ。今はあんなに高い所にあるように見えるけど、あれは幻なんだよ。もうすぐ空を切って落ちてくる」

 アートがそう言い終わるか終わらないうちに、数個の星が光の軌跡を残しながら、流れ星となって
アートの手のひらに舞い降りた。
あっけにとられているニコデモを見て、アートはちょっと得意げに微笑んだ。


「ほらね?」



                                                                                      end
  1. 2009/08/20(木) 03:43:08|
  2. etude
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