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フジファブリック presents フジフジ富士Q 14

 井和哉が現れる頃には、空は暮れかかっていた。不意に鳴り響いたアグレッシヴなイントロのギターの音に、私は殴られたような衝撃を覚えた。

 「マリアとアマゾネス」だった。志村が歌うとただのド変態なのに、吉井が歌うとものすごい色気が。アガる。




 志村と吉井は一見どこも接点がないようで、実はとても似通った部分があると思っているのだが、そのせいか吉井が歌ってもすんなりと受け入れられた。

 ぶっちゃけイエモンは聴き込んだことがないので、吉井に関する知識もたかが知れている。だが、彼のことは子どものように幼くて無邪気なところがありつつも、それでいて大人なのだと思っている。

 彼は多くの痛みを味わってきていて、でもどこか心の芯のようなところが白く汚れないまま残っている。彼は優しい。彼はフジファブリックを、志村を、本当に純粋に愛している。ぱっと見、フジファブリックの面々と比べてもかなり精神年齢が若く(お世辞)見えるが、その実彼らを見守る眼差しは保護者のようだ。

 志村の死は、彼に神を呪わせた。彼は誰よりも傷つきやすく、少しも堕ちることがないのに、どこまでも堕ちてしまう。その活字の慟哭は、我々の心を締め付けた。その愛ゆえに、私はむしろ吉井の歌をもっと聴きたいと思った。




 いつの間にか、空は夕焼けを通り過ぎようとしていた。夕焼けが終わってしまうことに、私はなぜか焦りを感じていた。その理由は今でも分からない。訳の分からない焦燥を感じながら、2曲目の「Anthem」に入る頃には、欠けた月が針葉樹林(コニファー)の縁に浮かんでいた。

 圧巻だった。

 空のはしにちぎって残されたような淡い夕焼けと、藍がかった空に浮かんだ三日月。日が沈んで、急に冷えて澄んだ空気にのって、『Anthem』は富士吉田の街に鳴り響いて、しかしこれは世界中にだって響き渡る歌だと思った。君の街までだって、私の街までだって鳴り響いている! 志村のいるところだけじゃなかったぜ。。。







SET LIST

吉井和哉    「マリアとアマゾネス」
        「Anthem」





  1. 2010/09/26(日) 15:48:25|
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