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密室ではない室内でのマクガフィン二個の消失

いきなりですが、弟が中二の時に文化祭の出し物用に書いてやった台本です。なので中二っぽいつまらなさが満載。

2本書かなきゃいけなかったので、ふたりで〆切前夜に遅くまで並んで書いてました。書き終わった後、弟がいつまで立っても書き終わらず、やつが終わるまで眠らせてくれなかったこともいい思い出です。

文化祭を見に行った時、役名を間違えて呼んでたこともいい思い出です。これ、上杉氏の分家本家から取ってるんですけどね、役名。分かる人が誰一人いないのがせつないす。

後は劇部の弟が、ぶっちゃけ素人の子より下手だったのもいい思い出です。







密室ではない室内でのマクガフィン二個の消失


概略
タイトルの通り、密室ではない部屋で、五人がテレビを観ている間にマクガフィンが消える。その間、トイレに行っていた一人が簡単に犯人を当てる。しかし、『探偵』はテレビ観たさになかなか根拠を説明しようとしない。

配役
・探偵(上杉)…ずっと頭かいてる。空気読めない。
・犯人1(山内(やまのうち))…指をこする。不敵。
・犯人2(扇谷(おうぎがやつ))…口元をさわる。特に何も考えてない。
・A(加々爪(かがつめ))…足をぶらぶらさせる。何も考えてない。
・B(勧修寺(かじゅうじ))…メガネを気にする。委員長。

舞台・道具
 勧修寺君の部屋。中央に円形のテーブル、その奥にテレビがある設定。テーブルの上は最低皿一枚を置いてちょ。コップやなんかは自由。そこだけ押さえとけば他はなんでもいいっす。テレビ、リモコンはどちらかといえばマイム推奨。マクガフィンを入れる小箱(紙製)はマストで。
注意点
・役者は特に指示されていない時も、各々の役の癖を意識的に(飽く迄も)さりげなく、全編を通して定期的に繰り返すこと。
わざとらしいとちょっと困るんで夜露死苦。
・扇谷と加々爪はバカなので、自分達の台詞がない時(主に勧修寺と山内が会話している時)はつまんなくなっちゃって、二人でふざけてる。
・なんかやりにくい箇所があったらケンカ売りに来てください。買います。じゃなくて、変えます。当方、臨機応変に対処致す所存です。




本編
 四人、真剣な表情で中央に立っている。沈黙。やがて、一人が口を開く。

扇: 問題は、(さりげなく口元を触る)誰がやったかってことだ。

 三人、うなずく。

加: (さりげなく足を動かしながら)フーダニット!

勧修寺(はしぶい性格)、つっこむ。

勧: 別に英訳しなくていいよ(メガネを押し上げる)

山: けど、この中から犯人を探し出すのは不可能だろ(さりげなく指をこする)。

勧: そうなんだよなあ(メガネ)。

 三人、腕を組む。そこにちょうど上杉がハンカチ片手に頭をかきながら(マジでかゆそう)下手から入ってくる。

上: やっぱこの時期に生牡蠣はヤバかったかー。おー、どうしたの、みんなで面白いかおしちゃって。
 
 四人、とっさに変顔。

山: いやあのね、お前がトイレに行ってる間にさ、この中の誰かが食っちゃったんだよ、マクガフィン(さりげなく指をこすりながら)
 
 上杉、頭をかきつつ、客席に背を向けながら舞台中央にあぐらをかいて座る。

上: ああ、わかったわかった。山内と扇谷だろ? 道理でなー。(一人で頷く)そうだと思ったんだわー。

 ほかの四人、呆然としている。しばらくして、加々爪・勧修寺の視線がゆっくりと山内・扇谷に向けられていく。

勧: おい上杉、お前が言ったことは本当なのか!?(メガネ)

 上杉、テレビのリモコンをいじりながら(頭かいてる)

上: んー? そうだよー。

 山内・扇谷、急に土下座。

犯人: すいませんでした!

加・勧: えーっ!?

 扇谷、顔を上げる。

扇: だって食べたかったんだもん!

 山内、特に許しもらってないのに勝手に立ち上がる。

山: 持ってきたのお前だろ。自分ちで食えよ。

勧: (若干キレ気味に)お前も食ったくせに何言ってんだよ。

山: (当たり前の顔で)俺は全てに於いてナンバー・ワンの男だからな。

勧: 生徒指導の数がか。

 山内、ちょっと得意げに頷く。

山: そうそう、指導が……はっ!(ショックを受ける)

 勧修寺、山内は無視して上杉に向き直る。扇谷もいつの間にか立ち上がっている。

勧: それにしても、上杉お前、何で分かった!?

 上杉はテレビを見ていてそれどころではない。

上: (爆笑しながら)おいおい、のぞきかよ!

 沈黙。冷たい空気が流れる。一拍おいて、

勧: もういい(メガネ)。

 場の流れとかいかにもどうでもよさそうに、扇谷は加々爪に謝る。というか、基本こいつらは犯人探しとかそんなに興味ない。

扇: ごめんな、ほんと。

加: (ちょっと照れくさそうに)別にいいよ、気にすんなよ。

扇: うん(ちょっと嬉しそうに)、ありがとな。

 山内・勧修寺、バカ二人を無視。

山: ちょっと整理しなおそうぜ。

勧: おまっ(食った張本人に仕切られて、ちょっとカチンと来るが抑える)、いい。それもそうだな。整理しよう。俺たちは今日、俺の家で『バック・トゥー・ザ・フューチャー』全三作大鑑賞会を予定していた。

山: (後を継いで)そう。そこへ扇谷が土産にマクガフィンを持ってきたのが、事の始まりだった。

 バカ二人はそれまで楽しそうに語り合っていたが、

扇: マクガフィンって結構高いのな。ゴデバよか全然高かったぜ!

加: (残念そうに)そうなんだよ、だから楽しみにしてたんだけどな。というか、そもそもの問題は扇谷が持ってきたマクガフィンが二個しかなかったって事なんだよな。

勧: (頷いて)進めるぞ。まず、今日の鑑賞会は全員の精神統一から始まった。その後、このテーブルを挟むようにして座って、映画を見始めたんだったな。すぐにウチの親がジュースとお菓子とマクガフィンをもってきた。ちょうど深夜の駐車場で銃撃戦が始まるシーンだった。

山:  勧修寺のお母さんとほとんど入れ替わりで上杉がトイレに行った。それからちょうどマーティーがデロリアンでタイムスリップし終わったところで、いったん映画とめて、さあ菓子食おうと思ってテーブル見たわけだ。

加: (指差して)お前が食ったくせに! よく言うぜ!

勧: とにかく、その時にはもう、皿の上のマクガフィンは跡形もなかったんだ。

 一同、考え込む。

山: やつに訊いた方がいいんじゃないか?

 一同、上杉をじっと見る。上杉は相変わらずバカ笑い。

上: カ、カルバン・クライン!

 笑いすぎで息できなくなってる上杉から目を離して四人、向かい合う。

加: あいつこすいから、交換条件持ち出すと、言うこときくよ。

扇: (頷いて)それしかないと思うね。

勧: (しぶしぶ)背に腹は代えられないな。

 上杉の方に向き直る。

勧: 上杉。

 上杉、すごくウザそうに振り向く。

上: なんだよ。

勧: (いらっとするが我慢)なんでわかったのか教えてくれないか。

 上杉、こっちに体ごと向き直る。何か腹黒いことを考えている顔つき。

上: お前もなんか教えてくれたらいいよ。そうだな、ためになる呪文がいい。

 勧修寺、「こいつマジ意味わかんねえ」という顔をする。

勧: (戸惑いながら)じゃあ、こんなのはどうだ?

 勧修寺、客席の方を向く。

勧: 『いくやまいまい  おおやいかさかさ  かやおおてはたかやき  かわった はわい』

上: おおっ!(マジ喜んでる)それ、どういう効果があんの?

 一同、驚く。

勧: (ちょっと困りながら)あ、ああ、日本の歴代の首相の覚え方なんだ。『い』が伊藤博文で、『く』が黒田清隆って感じで。頭文字を繋げたやつなんだけど、お前は理系だから、あんまり関係なかったかも――

上: おおっ! すげー! ためになった! あのね、こんなの見りゃ分かることじゃん。

 一同、ついていけない。上杉、また映画に戻る。

上: おおー! すげー!

 山内、上杉の襟首をつかんでこっちに向かせる。

山: 意味がわからん。俺のどこを見て、わかったんだ。

上: (ぶーたれて)モロ出しだろ。だってお前、さっきからずっと指気にしてるじゃん。(またテレビに戻る)

 加々爪、無言で襟首をつかんでこっちに向かせる。上杉、なぜかちょっとビビる。

上: (アイソ笑い。山内に向かって)……あー、ほら、マクガフィンて粉っぽいだろ? だから、それを気にしてるんじゃねえかと。お前って意外とそういうの気にすんのな。

 急に無表情になってまたテレビを見始める。

上: ちょ、ちょっとヤバいってそれ!

 一同、驚嘆の表情。

加: あいつ、意外と洞察力あるんだなー。

扇: (頷いて)バカにもひとつくらいは特技があってもいいよ。

山: あーなんか自分がバレた理由が分かったから、後どうでもよくなってきたな。

勧: いやいや、まだ扇谷のがわかってないだろ。(上杉に向かって)おい、扇谷のも教えてくれ。

上: (振り向きもしないで)呪文呪文。

 勧修寺、ちょっと考え込む。

勧: あ、これはどうだ。(正面を向く)『あおいふろ』!

 上杉、目を輝かせながらこっちを向く。

上: それの効果を教えてくれ!

勧: (ちょっと得意げに)安政の五ヶ国条約の相手国だ。アメリカ、オランダ、イギリス、フランス、ロシア。

 上杉、興味を失ってテレビの方に戻ってしまう。

上: それだけじゃあ、ちょっと教えられねえな。

 勧修寺、がっかり。しかし、すぐにまた何かを思いついたのか、気を取り直して上杉に話しかける。

勧: じゃあ、これはどうだ。『ほえしどにい』!

 上杉、目を輝かせて今度は体ごと向き直る。

上: おお、それはなんだ!?

勧: (ちょっと緊張の面持ちで)鎌倉新仏教の開祖の名前だ。法然、栄西、親鸞、道元、一遍。しかも、年代順!

上: おおっ! すげー! ためになった! あのね、扇谷はしょっちゅう口さわってたじゃん。マクガフィンってちょっと油っぽいだろ? だからそれ気にしてたんじゃねえかと。マクガフィンって口どけなめらかだから、食った形跡ってそれくらしか残らねえんだよなー。

 一同、気の抜けた顔。

勧: たったそれだけのことで……(一番ショックそう)

扇: んー、ま、でもこんなもんなんじゃねえの?

山: 正直、謎解きしてるやつを始めてみたけど、やっぱ目の付け所がちげえんだな。

加: ま、いい前座だったわー。

扇:(頷いて)早く大鑑賞会、再開しようぜ。

勧: そうだな。

上: (振り向いて親しげに)おう、早く座れよ。

 和やかな雰囲気。四人、いそいそとテーブルを囲んで座る。

上: よーし、これからほんとのぶっ続け鑑賞会だ!

 四人、和気藹々と頷く。

上: そうだ、俺が持ってきた菓子も食おうぜ!

勧: (苦笑しながら)今頃かよ! で、何持ってきたんだよ?

上:(いたずらっぽい顔でポケットから小箱を取り出しながら)なんだと思う?

加: さあ。(「お前分かる?」という顔で扇谷を見る。扇谷も首を振る)

上:(とびきりの笑顔になる)じゃーん!(箱を開けて中を見せる)マクガフィン五個!

他: (いい加減にしろという感じで叫ぶ)はじめに出せよ!!

 上杉、きょとんとした顔。暗転。
  1. 2010/09/16(木) 22:50:30|
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