inkblot

Drops



 ニコデモにあげた分で、缶の中の飴玉はあとひとつになってしまった。
缶を大事にポケットにしまいこむ。

「何? お前、あめ食べないの?」

 ニコデモは透明なセロファンの包み紙を解く手を止めて、首をかしげた。

「うん。最後の1コだからね」

「最後の1コだとなんかなのか?」

 ニコはセロファンをむいて飴玉を口に放り込みながら訊いた。

「最後の1コはカプットが取りに来るから残しておくんだ」

「かぷっと?」

「そう。カプット・ベアヒェン。飴玉の最後の1コを残しておくと、いつの間にかそれを取りに来て、
代わりに詩の一節を置いていく。この間は『ベーコンはおいしい』という詩だったよ」

 ニコは渋い顔をして腕を組んだ。

「それ、そいつの自作の詩なのか?」

 僕は肩をすくめて答える。

「 さあ。第一、カプットの姿すら見たことないからね。アヒルの卵くらいの大きさだっていうけど」

 ニコは困ったように頭をかく。

「夢見たんじゃないの?」

「違うよ」

「違うか」

「うん」

「分かんねーなあ」

 僕はニヤッと笑った。

「バカだなあ。分かんなくていいんだよ」



                                                            
             End
  1. 2009/07/08(水) 01:36:48|
  2. etude
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