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TEENAGE LAST

分かる人は最初から分かる元ネタ。

 

 
望をすべて摘み取った後のような、常にこの街を覆う陰鬱な曇り空の灰色が、わたしたちのティーンエイジを彩る色だった。

エコール、と彼はわたしを呼んだ。初めてわたしを見た時、エコール・ド・パリの画集を見ていたのが印象深かったのだと、後で彼は照れ臭そうに教えてくれた。それに長い間、君の名前を知らなかったから、と彼は小さく言い足した。心の中でずっとそう君のことを呼んでいたから、慣れてしまったのだと。

わたしの方は彼のことをキキと呼んでいた。初めて口をきいた時の彼の様子が、わたしの臆病な猫にそっくりだったから。

ふたりの呼び名は、ふたりだけの間で呼ばれた。ふたりの世界でだけ通じる名前。その最後の楽園へと通じる秘密の鍵。お互いにそれを相手に託して。

エコール、学校。わたしたちティーンエイジャーの生活の大半を占める場所は確かに学校だった。エコールのわたしも、彼の中の大半を占める存在になれているだろうか? わたしはいつもそんなことを考えていた。

 
わたしたちは学校が嫌いだった。多くのティーンエイジャーは学校という、頑丈でグロテスクな鳥籠から逃げ出す方法を考えることで頭がいっぱいだ。でもわたしとキキはそこから逃れる術のないことを知っていた。だから、わたしたちは学校というシステム――黴臭い朝の礼拝や、退屈な授業、黒衣の教師たち――から逃げ出した。学校の中で、システムを出し抜いて、さらにその奥へと。

わたしたちが見つけた隠れ家、数百年にわたる度重なる増改築の果てに忘れ去られた、校舎の片隅のあるかないかのような狭い小部屋だった。
 
 

  1. 2010/09/05(日) 11:12:49|
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