inkblot

四季盤


少し前に書いたものが残っていたので、それをアップします。

フジファブリックを知らない人用に書いたものなので、そういう感じはあると思いますが。

なぜか、春~秋盤で区切ってしまったのが自分でも気持ち悪い。





春盤―「桜の季節

夏盤―「陽炎

秋盤―「赤黄色の金木犀

冬盤―「銀河




まずは上のリンクから歌詞に飛んでほしい。

もっと欲を言えば、そこからさらにyoutubeなどで実際に曲を聴いてみてほしい。

唯一無二の情緒がそこにはあふれている。



春から秋にかけては、季節の移り変わりと、それによって想起された失われたもの、過去に感じた切なさが歌われている。

日本人はそういったものに対する感受性が非常に突出した民族であるが、今の時代に音楽であれ、小説であれ、あるいは短歌や俳句の類でも、これほど受け手の胸を締め付けるような「もののあはれ」を表現できているものはいない。

「赤黄色の金木犀」などは気だるいアルペジオのイントロから始まり、Aメロの終わりで一気に加速し、サビになだれこむ。

抑制された中に熱い思いがこもる、名曲である。



これはソングライターである志村正彦の持つ独特の感性だけからなるものではないだろう。

彼の故郷・山梨県富士吉田市は富士の麓にある小さな街である。

まさに吉井和哉が語った通りの情景(赤富士通信 号外参照)で、富士山に見守られ、昭和がそのまま残った、しっとりとした情緒あふれる街で、富士急ハイランドの所在地として知られるが、映画のロケ地としても有名な場所だ。

フジファブリックの曲の中の風景が、まさにこの街なのである。

具体的な単語はひとつも出てくることがないにもかかわらず。

あの街の風景を初めて見た瞬間、誰もが既視感に襲われるのは、もうすでにフジファブリックの楽曲の中でそこに足を踏み入れたことがあるからだ。



その富士吉田の街をこれ以上ないほど完璧に封じ込めたのが、「陽炎」である。

ひとつの情景を契機として想起される、もう戻ることのできない過去に対して感じる、言語化できない切なさ。

さあ、タイムカプセルを開けるようにこの曲を聴いてみよう。

そして目前にしてほしい。

「昭和の遺跡」と呼ばれる、陰りのある路地裏と、そこに佇む幼い日の音楽家の強い眼差しを。






  1. 2010/08/07(土) 21:07:59|
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