inkblot

20120530


 『ミュージックシーン』、昨日買って来た。忙しかったので夜遅く帰って来て迷った後2回聴いて寝た。コメントもらったのでちょっとちゃんとディスクレビューでも書いてみようかと思う。青野氏のレビュー、確かに今回はあんまり個人的には面白くなかったな。アートの全曲レビューとかかなり面白かったが。でもOIDにレビューが載ることの意義というのはデカいし、彼の音楽に関する教養の高さは凄いといつも思う。弟子入りしたい。まあでも今回はあんまり面白くなかったが。とりあえずGrandaddyの「The Crystal Lake」を何回か聴いている。だが『ミュージックシーン』のせいでほとんど頭に入らない。

 今日は久しぶりにロキノンも買った。BOC藤原が表紙で細美が載っていてエレカシが載っていておみそのページでメレンゲがちょっと載っている。みんなかっけーな。より多くの人に聴かれるようになって規模もこれだけ大きくなったのに昔から憧れていたあの人達は何も変わっていない。藤原みたいになりたかったんだ。気付いたらホリエみたいなことを考えている有様だが。しかし憧れの人をまだ憧れ続けられるということが途方もなく嬉しい。

 メレンゲの映りの悪いアー写と一緒に載せられた短い1ページのインタビューは男らしくてよかった。こんなに腹を括れたんだな。10周年おめでとう。アンタ達ならあと10年だってそのずっと先だって未来があるだろ。観たことのない景色をこれから先も嫌になるくらい見せてくれ。

 しかし本当に愛されてるバンドだよな。ソネタクミのブログなんか愛しかない。さすがイケメンである。多分メレンゲを最も精神面でサポートしているサポートは彼だな。『ミュージックシーン』に寄せられたフジ山内のコメントは裏に某変態の悪意しか感じない。。。しかしさすがイケメンである。無駄に爽やかである。そして当のクボンゲは10周年に関して、「今日はメレンゲの10年目の誕生日です! ファーストのギンガを出してちょうどこの日に新作『ミュージックシーン』 がリリースなんだ。ある時からいつだって遺作のつもりでつくるようにしてきた。魂を聴いてください。ああ。。携帯止まってます。。。。。払わなきゃ。。」とやはり無駄にキレキレである。しかもしっかりメールマガジンに引用されているあたりがまた凄い。今思ったがクボンゲはちゃんと二重鍵使ってるんだな。

 なんだかこうしているとすべてうまくいっているように思える。きっとこれから先はもっと報われるだろう。これだったら二つ分期待しても問題はないのかもな。気付いたらアンタ達の見せてくれる景色が大事なものになっていた。歌い続けてくれてありがとう。歌うことを辞めさせないでいてくれた彼にもありがとう。



  1. 2012/05/30(水) 21:52:08|
  2. 音楽
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

2012.5.3 BUMP OF CHICKEN GOLD GLIDER TOUR at 石川県産業展示館4号館 その7

「楽しんでる? オレは楽しかったよ。ありがとう」

 藤原が手にしたハカランダのネックのストラトをかき鳴らす。「ダンデライオン」だ。これも聴きたかった。だがくそ、今となってはこの愉快な曲調の唄も以前よりずっとどうしようもなく寂しく響く。要は自分の都合のいい勘違いでもいいからそばにいてくれればいいってことだろ。馬鹿野郎。

 「ダンデライオン」が終わって藤原はストラトをレスポールに交換した。今回は幕張と違ってギターチェンジが少なかったな。レスポールとJ-45はよく持ち替えていたが、今回ストラトを使ったのは考えてみればこの1曲だけだ。驚きである。

 チャマがわざとらしくオーディエンスを見まわしている。・・・あれか。


直井:あれ? なんだろう、このツヤツヤは。。。輪島塗・・・? あ! みんなの顔だったッ! オレ、あんまりテカってるから、てっきり輪島塗だと思っちゃったよッ!笑 みんな顔テッカテカ!笑 ・・・これくらいにしておこうか。苦笑 これ以上やるとみんなのチャマが嫌われちゃうから!笑 


 輪島塗かよ。。苦笑 秋田だったら能代春慶とかいうんだろうな。全国各地でテカりをいじり倒していくとはチャマも相変わらず相当ウザ――いや、何でもない。

 アンコール2曲目は「ガラスのブルース」だ。やつらがオーディエンスを煽りオーディエンスが合唱してもこれはやつらの唄だから大丈夫だ。そう思っていると、その後もオーディエンスは一緒にずっと歌い続けた。おい、藤原の声が聴こえないじゃないか! これだけは本当に絶望した。ボーカルが聴こえないほど合唱するなんてあんまりだ。遊びに来てるんじゃないんだぜ? 

 「ガラスのブルース」が終わると、4人はネックを握ったままドラムを囲んで何か相談を始めた。大分遠いので、マイクは欠片も声を拾わない。しばらく何かを話し合った後、藤原は再びマイクに向き直った。幕張ではなかったアンコール3曲目が始まる。「K」だ。

 疲れていくらかざらついた声だったが力強い。まるでそんな唄ではないがやつらは楽しそうだったしこちらも楽しかった。こうして目の当たりにするだけでこんなにもイメージが変わるんだな。あの光景は未だに目に焼き付いている。凄い光景だった。

 これで全部が本当に終わりだった。4人が楽器を手放す。チャマから恒例の帰りの注意がある。


直井:みんないい? 絶対そのまま帰っちゃだめ! 汗かいてるんだから、帰り道、ほら田んぼの湿気とかで冷えるでしょ? だからちゃんと着替えて! (わざとらしく)そういえばこのあたりでいいTシャツ売ってたような気がするんだよな。。Tシャツ買って着替えて帰るんだよ?笑 


 チャマと藤原は水をぶん撒いたりステージを降りて最前列のオーディエンスにサービスする。チャマはさっきあんなに自慢していたTシャツをもうぶん投げている。メンバーがみんなはけた後、藤原がマイクの前に戻って来た。


「今日は来てくれてどうもありがとう」


 疲れた深い声で丁寧にゆっくりと言う。これだけのことを口にしただけなのに唄一つ分くらいの重みがあるから不思議だ。


「また絶対来るよ。。だからまたライブ来てね。あと風邪ひくといけないからちゃんと着替えて帰ってね。バイバイ、おやすみ」


 猫背で疲れきっているから足取りはふらふらしている。幕張は元気だったのにな。メンバーから大分遅れて下手の方に歩いて行く。舞台袖に入って見えなくなるまでずっと手を振っていた。ちゃんと左右に振っている。あの変な手の振り方を思い出した。手のひらを左右に振らず手招きするような変な振り方だった。もうしないんだな。猫背が完全に闇に消えてしばらくすると客電がつき、終焉を告げるアナウンスが流れる。スクリーンに「GOOD LUCK」と文字の入ったステージ上からさっき撮ったばかりの写真が映り、「グッドラック」のストリングスバージョンがオーディエンスを場外へゆっくりと送り出す。

 これだけ熱いのに外は寒かった。相変わらず雨が降っていてパーカの上に染みを作る。ぽつぽつと立っている街灯が褪めた白い光で暗闇を薄めている中に列を作ってバスに乗り込む。バスの腹の中で座る女子中学生の前に立って揺られて、目の前の女の子の前髪が濡れて額に張り付いているのを目に映しながらずっと今観たことについてずっと考えていた。金沢駅でバスを降りて早足で安宿まで戻ってそして今これを書いている。まだライブは過去になってはいない。





SET LIST

1. 三ツ星カルテット
2. 宇宙飛行士への手紙
3. 分別奮闘記
4. ゼロ
5. stage of the ground
6. 友達の唄
7. グッドラック
8. smile
9. ハルジオン

10. 車輪の唄
11.sailing day

12. 星の鳥
13. メーデー
14. イノセント
15. supernova
16. beautiful glider
17. カルマ
18. 天体観測

(ENCORE)
19. ダンデライオン
20. ガラスのブルース
21. K

  1. 2012/05/28(月) 10:29:57|
  2. 音楽
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

2012.5.3 BUMP OF CHICKEN GOLD GLIDER TOUR at 石川県産業展示館4号館 その6

 「金沢、あったかいなあ。。。」ともう一度だけこぼして、藤原はアコギでアルペジオを弾き始める。こいつのこの弾き方がどうしようもなく好きなんだ。このまま1時間くらいずっと弾いていてくれたって構わない。藤原はアルペジオを弾きながら増川に話を振った。藤原のギターをBGMに増川のMCである。これがどれほど贅沢なことなのか、増川にはよく分からないんだろうな。


増川:えっと。。。金沢、久しぶりに来れて嬉しいです。あのー、、えっと、昨日来たんですけど、駅に人がいっぱいいて。。。旅行しに来た人とかもだけど、学生さんとか。。。そうやって行き来してる人をみてると、なんかオレ、さびしくなっちゃうのね。うん。。そんな感じです。。。笑 あとなんか駅のふれあい館てとこに行きたかったんだけど、時間がちょっとあんまなくて。。服とか売ってるところをちょっと観たけど、綺麗でした。。笑 ふれあい館、行きたかったな。。。


 ふれあい館って多分百番館のあれだよな。なんで行きたかったのは謎だ。しかしこうして生で増川を観ていると、メレンゲのクボからあらゆる責任感とプレッシャーと劣等感を取り除いて更にあのヤバいMCをもう少しマイルドにしてもっとかわいげのある感じにしたら増川になるんじゃないだろうかと思うな。まあそれはどうでもいい。MCが終わって藤原と増川が顔を見合わせる。藤原がにやりと笑う。左右のサブのスクリーンに藤原のネックを押さえる手が映る。美しい手だ。動かなかったらそうでもないだろうが、ギターを弾くやつの手は美しい。この野郎、分かってて映してやがる。。

 藤原の弾くアルペジオが聞き覚えのあるものに変わる。「beautiful glider」だ。雲海の中を飛ぶアニメーションがスクリーンに映る。歌詞に合わせて藤原が黒いリストバンドをした棒のような腕を肩から大きく振った。確実にこのライブは終わりに向かっているんだな。「誰にも見えないさ」という所を「僕には見えたよ」と唄っていた。

 J-45がレスポールスペシャルに持ち替えられる。蒼い光が暗がりの底に淀む。不穏な音に空気が張り詰めた。高い位置にあった一列の照明が波のように高さを変えて動いて、真紅の光を投げかける。蒼と赤が交わる部分は紫になって滲んだ。歪んだ荒々しいレスポールがつんざく。「カルマ」だ。生のこの気迫は凄まじい。ただ全く正気なんだよな。アンディ小山田みたいにタガは全く外れていない。幕張よりも癖の強く出た声もすごくいいよな。というかイントロの感じが本当にすごいんだ。もう音源じゃ物足りなくなる。「ここにいるよ 確かにさわれたよ」と唄っていた。


藤原:今日晴れてよかったね! (オーディエンスがつっこむが聴こえていない) でもちょっと雨降ったでしょ? 並んでる時大丈夫だった? 濡れなかった? 風邪引かないようにね。


 もう一度、「金沢、ありがとう!」と言って「天体観測」を始める。これで本編は終わりだ。熱かった。物理的にも精神的にも何の衒いもなく熱かった。BOCを前にするとどうしようもなくあの初めて聴いた頃に戻ってしまう。この瞬間はバカみたいに素直だった。藤原は息も絶え絶えということはないが、幕張の時と違って今回はかなり疲労が見える。ざらついた声で唄う。大サビの一部は唄わなかったというより唄えなかったように見えた。この唄のサビはいつもライブの最高潮の一点だが、その一点に悲しみと喜びが入り混じっているように思う。


 そしてメンバーは去って行く。暗がりで再びあの4人組を呼び戻そうと拍手が起こった。リズムは緩やかに変わっていく。しかし金沢は歌わなくてよかった! その喜びを噛み締めていると、下手後方ブロックのある一点から歌声が起こり始め小生を絶望に叩き落とした。「supernova」の合唱は瞬く間にオーディエンス全体に広がっていく。やめてくれ…… 歌いたかったらカラオケでも行ってくれ。なあこれって我がままなのか? ううむ。。。やっぱり嫌だ。たとえ耳栓してたって聴こえるじゃないか。

 しばらくしてメンバーがまた出て来る。チャマは「撮るけんね!」と言いながらフロアに持ってきたデカいカメラを向ける。チャマは「もう一枚撮るけんね!」と言って結局2枚撮った。

 藤原と増川が黒のロケットTシャツ、チャマは薄墨色の、升はチャコールグレーのスティッチTシャツを着ている。スティッチ……! これだけはガチで納得できねえ。おい…… マジでこれはないんじゃないか。藤原とかよく恥ずかし死にしないな。とりあえずスティッチグッズを買った人間とだけは分かり合えねえと思う。絶対にだ。


増川:あ、これ3つバージョンなんだよね。ほら。。。(リストバンドを見せる)

直井:そうそう! ちょうど今日届いたの! 袖のところにも入ってるんだよね!(ドヤ顔)


 確かに右の袖口に三ツ星がついている。リストバンドもそれぞれそうらしい。


直井:これはオレらだけなの! でそういえばみんな、なんでスティッチなのと思ってるでしょ? いや、みんなも好きだと思うし、オレらも好きだから。「え、なんでそれスティッチなの?」って訊かれたら逆に「なんで」って言って。「え、これいいじゃん」って。外人の人に「オーウ! スティッチ! ワーイ?」とか言われたら、「Why not?」って。笑 練習しようか! 「ワーイ!」 (オーディエンスが繰り返す) 「ワイナーット?」 (オーディエンスが繰り返す) よし! 


 チャマとも絶対に分かり合えねえ。まあ藤原がスティッチを着ないだけマシだな。・・・もし着ていた会場があったら小生にご一報を。




  1. 2012/05/27(日) 10:25:59|
  2. 音楽
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

20120526

 メレンゲの「まぶしい朝」、結局一回スペシャで流れたっきりなんだがマジで頑張ってほしい。次はM-ONで29日朝4時からのプログラムの15曲目に流れるらしいが、アンディモリのように1日2回流せとは言わないからせめて2日に一回くらい流れるようには出来ないだろうか。。。本当に適切な額を適切な使い道に使ってプロモーションすればメレンゲは間違いなく売れるけどな。でも売れたら困るので案外このくらいがいいのかもしれない。だがメレンゲのDVDとか観たいじゃないか。インタビューも読みたいじゃないか。だからやっぱり採算が取れる程度には売れてもらわないといけないよな。

そういや「フェス・岩尾」を観たんだが予想以上にカオスだった。おっさんでも赤面したりしていいんだな。。なんか大人は顔を赤くしない、あるいは赤くしてはいけないんだと思っていたので勇気をもらった気がする。ちなみに赤面していたのはクボンゲだけではない。タケシタもだ。ちなみにクボンゲは声がめちゃくちゃ上ずっていた。

 まあなんか色々とまた訳のわからんことを云っていたが、一番強烈だったのは「メレンゲが結成10年の年に成功させたいこと」というコーナーのクボンゲが書いたフリップである。内容もすごいがまず見た目がすごい。字自体も全く上手くないが並びがデコボコしていて、間違えたらしく2ヶ所くらいぐちゃぐちゃと塗りつぶされている。更に最後の一文は字の細さが気に入らなかったらしく、二度書きされて字が濃くなっていたが軽くホラーだった。

 そして内容はというと「蚊に刺されたい。。。15年ぶりに」である。「(上ずった声で)あの、子どもの頃は刺されてたんですけど、もうずっと刺されてなくて。。。心配なんですよ。病気なんじゃないかって。。。(真顔で)だから6月24日はそれも目標にしていきたいですね」ということである。刺されたら教えてくれるらしいぞ。小生はもうカーズにならって考えることをやめようと思う。

 さっきツイッターをみていたらタイムラインにこんなツイートが流れて来た。




 こいつがリツイートした段階でもう全く内緒じゃなくなっているんだが。カンペの技術も志村(床に敷き詰める)から1年前までのクボンゲ(スケッチブックに書いておく)を経て現在(iPad)に至っているのだから、そう考えると割と感慨深・・・くない。全然そういうのはない。お前らみんなミイラズ畠山かアンディ小山田の爪の垢でも煎じて飲め! あいつらヤバいよな。でも本当にカンペなしで歌っているのか心配になって来たな。。。クボンゲと志村のせいで他のボーカルが信じられない。

 最近テンションがおかしいな。もう毎週ゼミ発表なのでヤバいんす。内容も迷走しまくっているが日本語が話せないという大きな壁にぶち当たっている。クボ志村を笑えないレベルだ。研究内容を説明しているうちにどんどん自己嫌悪に陥るからいけないんだな。おかしいな、別にそんなネガティブ人間でもないのにと思っているが「こんなゴミカスのような内容を・・・」だとか「こんなことは説明したら失礼だろう」と考える癖はなかなか治らない。来週もまた発表だが、中国やイスラームをやっている人を前に日本史のマニアックな用語を説明せず使うというような致命的なミスだけはやりたくないな。。己れよ、多分みんなまず風土記が何か判ってないぞ。

 ・・・話が逸れた。まあ何故BOCの覚え書きの他にこんな更新をしているかと云えば、『ミュージックシーン』のささやかなプロモーションにならないだろうかと思っているからである。BUMP OF CHICKENやアンディモリやミイラズといったワードで間違ってここへたどり着いた皆さんには、是非ちょっと観て行ってほしい。とか言っておきながらやっぱり観なくていいと思っている。結局小生はいいライブを自分だけ観れればいいと思うどうしようもないつなんで。まあ観ないやつは損してるだろうが。







  1. 2012/05/27(日) 00:47:49|
  2. 音楽
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

2012.5.3 BUMP OF CHICKEN GOLD GLIDER TOUR at 石川県産業展示館4号館 その5

 暗転した瞬間、スクリーンに無数の瞬く星が浮かび上がる。生きているかのように瞬く星の中央に音と連動して蒼い心電図のような閃光が通り抜けていく。これは正確には「星の鳥」ではない。正確には「星の鳥」のあのアルペジオをぶっこ抜いた後の残りの音源である。これが流れている間にへなちょこ4人組は恥ずかし島での苦役を終えて、またメインステージの方へと戻っていく。

 藤原はマイクスタンドのピックホルダーから取ったピックを3枚投げた。3枚目はヘロヘロと飛んでいって本人も変な顔をした。そして最後に残っていた一枚をむんずと掴んでむしり取る。投げるのかと思っているとしっかりと握りしめてステージを降りていった。まだやつはピックが惜しいのか。しかしあんな虫歯みたいになるまでピックを使うやつは藤原以外に見たことがないよな。そうしている間も「星の鳥」が時間を稼いでいてくれる。

 そのうち生音のアルペジオが始まった。なんだろうな。全然音が違うもんな。音源の平べったい音にはないかたちと色がある。スクリーンに星の鳥が浮かび上がった。「メーデー」だった。今回はあまり升のドラムソロの印象はない。ギターの音ばかり聴いていたように思う。

 「メーデー」が終わると、ぱっと藤原に当たっている光が強くなった。はっきり言ってまぶしい。


藤原:オレ、輝いてますか……? (オーディエンスの声を聴いて)そう。。あとで父にメールします。「今日、みんなに輝いてると言われました」と。笑 でもオレちょっと輝き過ぎだからもうちょっと光を落として。。そうそうそんな感じ。ああ、やっとみんなの顔が見えるようになった。。。おいっすおいっす! 大丈夫? 調子悪い人いないっすか? いたら周りの人も助けてあげてね。・・・ん? オレ? オレはね、もう去年の暮れから色んなところで言ってるんだけど、最初っからそういう風に見えるんです、はい。苦笑 複雑な顔だと。。複雑な顔をして生まれて来たと母も言ってました。何か思う所があったんだろうと。はい。

 金沢はこの間のライブハウスツアーで来れなかったんですよ。でもずっと来たくて。金沢、いい街ですよね。僕も好きです。旅行にも来ました。この人と温泉に入りました。

増川:(ほがらかに)入りましたねー。

藤原:「世界三名泉」て。

直井:世界……ッ!?笑 

(騒然となる)

藤原:僕ら純粋ですから。ピュアなんで、真っ裸で入りましたよ。


 多分そういうことではないと思うんだよな。


藤原:(なんでもないことのようにさらっと)まあでも今日もう終わりだしね。(オーディエンスから声が上がる)ホントホント。今日来てくれた人はどこから来たんですか? (口々に答えるオーディエンスの声を聞いて)みんなの県でやりたいよ。。。そしたらまた来てください。


 醒めたアルペジオがはじき出される。「イノセント」だ。聴いていてはっとした。こいつは寂しいんだ。BOCのファンは星の数ほどいる。だがそれは常に入れ替わっている。前にライブに来たオーディエンスの大半は次に来ることはもうない。ずっとBOCを聴き続ける人間がいないんだ。ここにいる誰かがいつかは離れてしまうということは藤原にとって非常に鋭利な現実なのである。この地に満ちたファンの数は藤原にとって何の意味もなさない。この男はいつからこんなに寂しかったんだろう。思えばくどいほど同じ唄ばっかりだ。強烈に寂しいだろうな。そうじゃなきゃ「グッドラック」なんか絶対に書けないよな。そして「イノセント」は藤原が去って行く人々の未来に仕掛けた最後の祈りだ。今頃気付くなんてな。。。視界が滲んだ。

「金沢、あったかいなあ。。金沢、あったかいなあ。。。」

 藤原はレスポールからJ-45に持ち替える時に呟いた。本当に心からそう思っているんだろうなと思わせる深い穏やかな声だった。そして「supernova」が始まる。歌詞は細かく変えられている。

「君の存在だって いつでも思い出せるけど
本当に欲しいのは―― 金沢ありがとう!」

 凄まじかった。巨大で密度の高い音像もすごいが、「淡々と歌うことに徹するべきだ」と言っていたあの男が感情を抑えきれなくなっていたのに圧倒された。

「君と話すことで 思い知るんだ 唄いたい唄だらけって事」

「君の存在だって 世界では取るに足らないけど
僕の世界は それによって 守られた」

「僕らの時計は 止まらないよ 動くんだ」

 音が空間を満たし揺さぶる。なんか誰かがいっぱいそばに居るような音像だ。見守るような気配をやたらたくさん感じる。物凄い熱量で唄は終わった。「ありがとう」という一言が最後の一音の余韻に混じった。



  1. 2012/05/26(土) 10:22:28|
  2. 音楽
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
次のページ