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20150214 初恋の嵐 クボンゲ編


 隅倉の声に呼ばれて安部コウセイの次に飛び出してきたのはクボである。毎回小さいハコでやる初恋の嵐だと勢いよく飛び出してくるが、今回も、というか今回はいつもよりすごかった。風のように飛び出してきて、激しく頭を振りながら歌う。めずらしく無帽で、白いシャツに黒いカーディガンである。服装もあいまってどこか高校生みたいだ。いるよな、こういう高校生。

 一曲目は「初恋に捧ぐ」。テンションは高い。キーが低いからものすごく歌いづらそうだ。声も音圧に負けている。だがひるんではいない。嵐のように歌う。サビ前なんか完全にシャウトだ。喉を潰して曲をねじ伏せにかかっている。振り乱した前髪が目をよぎる。しかしさすがにオーディエンスを見つめ返す余裕はないらしく、視線は終始上空を泳いでいた。体を折って歌い込む。サビにさしかかると横を向いて歌い込んでいたのは意図してだろうか。だとしたら正解かもしれない。目を剥いているところをオーディエンスに観られずに済んだからな。全体的にかなり荒削りだが、でも誰が歌ったよりも初恋の荒々しさが出ているのではないか。この必死さがいい。

 関西弁訛りの「楽しい」という一言を発して、「Body&Soul」。クボは重量感の全くない声質なのに、これはかなり攻めの選曲である。青臭いこの曲に今日のクボは妙にはまっていた。やはり激しい身ぶりで熱唱する。11日、「魔法」で高音をおもくそ失敗していたのでこの曲だと分かった瞬間、高音が心配だったのだが結構綺麗に出ている。間奏ではスティックをつかみ、めちゃめちゃにカウベルをたたきまくっていた。この夜、誰よりも嵐だったのは、クボケンジ、この男だった。本当に嵐のように吹き荒れて、あっという間に去って行った。

 しかし、こうして久しぶりにクボさんの初恋の嵐を聴くと、クボの声質の本質的な軽さ、細さと初恋の嵐の曲のガタイの良さを改めて実感するな。西山のボーカルもいくらかハスキーなのであまりゴツいイメージはないが、でもやっぱりかなりパワフルである。ていうか、クボさんはホントにどうした。あんなクボンゲ観たことないっす。そもそもシャウトするような曲は絶対書かないからな。メレンゲがギターロックに振りきれなかった理由が今夜ちょっと見えた。ゴツいロックをやるにはやはり声のエアリーさがネックだな。実にいい声なんだが。でもよかったなあ。すげーアガった。11日から今日のライブでとどめを刺されてしまった。むしろメレンゲでこれを観てみたいと思ったが、しかしこれは二曲が限界だな。それからあのハンドマイクはじめてだった時と比べると、驚くほどギターを持っていなくてもたたずまいがかっこよくなった。右手がついピックを握っているような、来迎印になりがちなのはいいと思います。十年後もぜひ来迎印でいてほしいものである。


  1. 2015/02/14(土) 23:53:27|
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20121231


 大掃除をしてちょっと紅白を観ていたらこんな時間になってしまった。部屋の掃除は最後までしなかったが机の上と寝床とはばかりの掃除はしたので、今年は自分を褒めてやってもいい気がちょっとする。部屋の掃除は最終的には火炎放射器を導入しなければならないだろう。ちなみになんで寝床の片付けが必要かというと、小生は寝床で色々やる癖があるので本やCDで寝るスペースがなくなって来たからである。とりあえず本は概ね撤去したのだが早く置き場を考えないとまずい。このまま人生が続くと、多分最終的には本とCDに埋もれて住む場所をなくす気がする。そんな年の瀬である。

 しかし紅白で初めて色んなアイドルを観たがなんかすごいな。。。でももうどんなか大体忘れた。なんか「うざ。。。うざ。。。」みたいな歌詞があったっけか。まあ今年は幸子が出ないらしいので大体どうでもいいしな。せっちゃんは観たかったのだがあともう少しというところでお母さんがテレビを消してしまった。もっちゃり兄が観たかったんだが。。。まあいい。来年観に行こう。

 年の瀬ということで今年複数回観たバンドを紙の上に並べたりしている。まずBOC。2回も観れた。やっぱり誇らしいし嬉しいよな。2回目はわざわざ金沢まで行った訳だが、行って本当によかった。もしかしたら「お前が行かなければ金沢の人が一人行けたかもしれないのに、トラベリングオーディエンスなんて図々しくないか」と言われることもあるかもしれない。でも小生は自分のことを図々しいとはちっとも思わない。だって絶対にその行けたかもしれない人よりも自分の方がBOCが好きな自信があるからだ。何年も何年もBOCのライブを観たいと思ってきたしチケットだって死ぬ気で取った。凄まじかったな。。。あれは墓場まで持って行く光景だ。観れてよかった。やっとだ。これだけで2012年を生きた価値がある。

 フジファブリックも今年は2回観れた。競争率が凄かったので運のいい方だろうと思う。全くステージの上ですべきことを全て本能で分かっているような怖ろしい連中である。例えばBOCは演奏なんか全く上手くないけれども曲が全てを持って行く。だがフジファブリックはそもそも曲以前の膂力が凄まじい。単純にそれだけでもっと観ていたくなる。個人的には未だに3人という状態を受け入れがたい思いがあって、語弊があるかもしれないが時に憎悪に近いような感情さえ抱くことがあった。しかし「Light Flight」TOURで3人の誠実さと頑張りというのをもっと真っ直ぐに受け止めることが出来るようになった気がする。本当にかっこいい3人である。この人たちだったらきっと一生フジファブリックを守ってくれるんじゃないか。来年も10年後ももっと遠い未来になっても彼らが努力し報われることを祈る。そして今までにありがとうと言いたい。

 初恋の嵐は4回観た。観るたびに曲の良さを改めて教えられたな。観るたびにもっと好きになった。誰が歌っても曲があれほど強く光っているから、その輝きを増すことはあっても翳らせることはない。一年かかって少しは西山達郎という人のことも知ることが出来た。そして初恋の嵐のステージの上は多分どこよりも嘘のつけない場所だった。大物だろうがそうでなかろうが誤魔化したりすればすぐに分かるし気持ちがこもっていてもすぐに分かる。ゲストボーカルには大物も多かったが、こういった人たちには本当に彼の才能というものがよく分かっているんだと強く感じた。曲を聴いているとついついもうここにはいないということを忘れてしまう。たまに思い出してはっとする。この曲たちは超新星だ。これに魂を注ぎこんだ男はもうとっくにいないが、それでも瑞々しく、生き生きとして強く強く輝き続ける。その光は決して消える事がない。この目を潰すような光に、もっと多くの人が気付けばいいと願っている。

 メレンゲはもう何回も観た。星めぐりの夜は本当に素晴らしかった。序盤はやっぱり緊張していておかしいところもあったが、それでも野音という枠のない会場をあれだけものにしたのは圧巻だった。もう一度あの色と形を観たい。そしてバンドとオーディエンスの双方に思い入れのあるライブだったというのもよかった。こんな凄いものを観れただけでも夢みたいだが、これと同じか下手したらもっと凄まじいものを機会があればこの先ずっと見せてくれるんだろうと感じさせてくれるのも嬉しい。いや、本当にそれほど嬉しいことはないだろう。7月のワンマンではクボンゲが無理に笑おうとしていたのでよくないと思ったが、12月のゴーイング・ユニゾンとの3マンではそうではなかったのでよかった。それはしなくていい努力じゃないか。無理に笑ったらそれはやっぱり嘘になる気がするんだ。しかし下半期はあまりにライブが少なすぎた。来年はもっとホールで観たい。

 何気にミイラズも2回観た。「あーあ」が生で聴けてよかった。あれは本当に美しい曲だ。何回聴けてもあれは嬉しい。「CAN」を筆頭に鉄板のキラーチューンも色褪せない。1月に出たアルバムは割とスルメ曲が多いと思ったが考えてみるとシングル曲は名曲ぞろいだった。「気持ち悪りぃ」「うるせー」を生で聴けたのもよかった。でもやっぱりミイラズは割と後ろで観たいよな。。苦笑 なんであんなにみんな元気なんだ。。。アンディモリに比べると動員数はまだまだという感じがあったけども、来年はもっと報われるんだろうな。あとリュック欲しいんだが通販やってくれないだろうか。。。

 2回というとゴーイングもなんだかんだ2回観てるんだよな。ナカザ。。。最早ゴーイング=ナカザになりつつある。歯並びの悪い丸っちい童顔にグラサンのあいつである。もう息をしているだけで軽くコントである。何だか観るたびに自分の中の閾値が下がっているらしく、次にゴーイングを観る時にはナカザが出てきた瞬間に呼吸困難に陥るのではないかと少し心配である。しかし「LISTEN TO THE STERO!!」と「おやすみ」を2回も聴けたので大分得をした。

 今年はキセルやアンディを1回しか観れなかった。それは残念である。来年はキセルもアンディモリもハイエイタスも死ぬ気で観に行こうと思う。そう思うと来年が来るのもちょっと楽しみだよな。いっぱいライブやるだろうか。BOCもライブやるといいな。何にもなくてもライブやったっていいんだぜ。普通にライブしてほしいんだ。

 個人的に音楽で一年を振り返るとこんな感じだった。一年間わくわくさせてくれた沢山のバンドにありがとうと言いたい。彼らはヒーローみたいなもんだ。そしてここをわざわざみてくれている人にも。もらうコメントが嬉しかった。来年もよければまた遊びに来てください。良いお年を。



  1. 2012/12/31(月) 23:16:14|
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富士と初恋と溝


 今期の発表がやっと全部終わりそうである。まあまだ漢文の担当箇所に手を付けてないのでそれが怖いが。おまけに風邪まで引いて色々と困ったが何とかなりそうである。

とりあえず、あれからダイバーシティでフジファブリックを観、神戸で銅鐸と初恋の嵐を観、NHKホールでハイエイタスを観た。これだけ観たらどれかは普通のライブだろうと思ったがとんでもなかった。フジは相変わらず化け物じみているし、新曲までかましくさった。新曲のサカナクションみたいなコーラスワークが実に見事で未だに耳から離れない。ついでにあのぴかぴかライトを使った茶番も頭から離れない。それから金澤先生が鍵盤の上から転げ落ちたことも忘れられない。かとをさんが噛み噛みだったことも忘れそうもない。

 神戸の初恋の嵐はAXの100倍よかった。あの日頑張れば行けたが迷って行かなかった人は壁に頭を打ちつけながら後悔するがよかろう。セカイイチ岩崎の「フライング」、クボンゲの「真夏の夜の事」、TKの「Good-bye」は本当に素晴らしかった。このうちのどれか一曲を聴けただけでも神戸まで行った価値があった。そして堂島孝平のMCである。同じ身長ネタでも金澤先生とは月とスッポンである。あの瞬間、こくさいホールに爆笑の渦が巻き起こった。東京でもしっかり笑いを取っていたが、最早プロだ。。。金澤先生は堂島孝平に弟子入りしてみてほしい。

 ハイエイタスは正直2デイズの初日でもあったし、個人的には特別なライブになるだろうがそこまで凄まじいライブにはならないだろうと思っていた。バカであった。何だよあれ! 細美さんすげー! 多分終演後の小生に何か喋らせたら「細美さんすげー!」しか言わなかっただろうと思うが、考えてみると今も大差ない。のっけからとんでもねえタイミングで下ネタを言い放って堀江博久を凍りつかせていたが、許す! 最後の最後までやっぱりとんでもねえ下ネタを言っていたが全然許す! 細美さんは許す! 歌ってギターまで弾いているのに我慢できなくなって同時に踊り出すやつなんか細美さんくらいだろう。MCしながらピョンピョン撥ねまくり、「すんげー楽しい! ヤベー、帰りたくねえよもう! 次の曲やりたくねー! どうしよう! マジでやりたくねえ!」と云って子どもみたいにMCをむりやり引き延ばす。言っとくが細美さんは初恋の隅さんより年上である。あり得ねえ。細美さんが今もステージの上で、3階からでも余裕で見えるくらいの笑顔でいてくれてマジでよかった。あの顔はステージの上以外で楽しいことがあったら絶対にできない顔だ。彼は実は笑顔で途轍もなく怖ろしいMCをしたんだが、でもステージの上であれだけ笑っていられれば大丈夫だ。ステージの上で笑えなくなった時は相当まずいだろうが。しかし彼は絶対にオーディエンスを裏切らないもんな。これから先もずっとあの笑顔でいてほしい。こんな純粋に楽しい気持ちになったライブは久しぶりかもしれない。細美さん大好きだ。あと坂本美雨は声がすごく綺麗だった。あとジェイミーがかわいかった。かわいかったが細美さんと同じくらい身長があったのは気のせいだろうか。ジンガイでけーな。。。


 今は時間がないのであまり書けないが、もう少し詳しく色々と書きたいとも思う。思い出しただけでも大分興奮する。これから寝たいんだが。。。徹夜してお伊勢参りでもしようか。




  1. 2012/12/19(水) 02:34:26|
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初恋の嵐 at Shibuya-AX

 行って来た。細かく書く時間がないからざっと書く。開場は少し遅れた。入るとアトミック・スウィングなんかがずっと流れていた。開演時間を10分ほど過ぎてSEがやむ。隅倉が挨拶するのだが妙にエコーがかかっているしバックでデカい楽器の音がするのでなかなかオーディエンスに伝わらない。3回目でやっと周りの音を止めて云ったのでやっと拍手が起こり、メンバーが下手から入って来る。

 おっさん達が楽器を手に取る。最初の一音がものすごい一撃だった。どいつもぱっと見は冴えないがこの瞬間のかっこよさったらないぜ。「初恋に捧ぐ」、非常に明るいメロディなのにこの時はなぜか凄まじく悲しく胸に響いた。現れたのは松本素生である。トリコロールのストライプのシャツにグレーのジャケットを羽織っている。だが松本なんかどうでもよかった。もう猛烈に悲しかった。

 二人目のボーカリストはセカイイチ岩崎である。くるくるの頭に山高帽を被り、青いシャツを着ている。一曲目は「No Power!」で二曲目は確かアコギを弾いていたが何の曲だったか今ちょっと忘れてしまった。生意気なクソガキみたいだがアッパーな曲もバラードも歌いこなす。三曲目は「Touch」だった。小暮のギターソロから各メンバーのソロが始まり、圧巻だった。岩崎はあんまり声を張らないが「Touch」では張らざるを得なくなっているようなところがあってよかった。隅倉曰く、岩崎はリハで自分の曲をさっさと終わらせて他人の曲まで歌って帰っていくそうである。しかし大体の曲は歌えるが今日は「Touch」の曲の入りをとちる夢をみたらしい。とちりはしなかったがちょっともたついた感はあった。岩崎が悪いんではないが。あと「オレ初期メン!」とか言ってたな。

 三人目は無頼庵。縞縞のオーバーオールを着て現れる。エレキを持ってきていてマイクを調節した。その時何か下ネタを言っていたような気がする。最初何と言ったのかわからなかったが多分そうだ。小生は下ネタが嫌いなので減点だ。一曲目はたしか「君の名前を呼べば」だった。ギターの音がぶっとくてかっこよかった。ヘッドのロゴは違ったが確かギブソンタイプのギターだったな。ここでも曲の入りがうまくいかなくて一回やり直したと思う。無頼庵は聴いたことがないんだが西山と違って渋い声である。なかなかよかった。古い友人だからきっと古い曲をやるのだろうと思った。MCでは玉川をいじりながらもしょもしょとしゃべっていた。二曲目はコモンビルの「睡眠」。三曲目は「のび太みたいだった西山をはじめてかっこいいと思った曲」だと言って「果てしない思い」をやった。なんとなく目尻が白く光っているのが印象に残っている。話し声と違って堂々とした歌はよかった。でも下ネタ言ったから減点な。

 四人目は誰だっけ。小谷美紗子だっけな。らくだ色のセーターを着てぷくぷくした女性が下手から現れる。一曲目は「Good-bye」だった。小谷の曲も聴いたことがなかったので楽しみにしていたががっかりだった。妙にもにょもにょした歌い方をする。前に聴いた岩崎のやつが非常によかったせいもあるが、これはよくないな。。終始ニタラニタラしているのもよくわからない。ニタニタしているかと思うと急に無表情になる。これはおへんちゃんだな! 赤羽系と命名しよう。電車の中にこういう人がいたら車両を変えるかじっくり観察するかのどっちかだ。嫌いじゃないがライブの最中は遠慮したいぜ。二曲目は「涙の旅路」だった。こちらの方がちゃんと歌えていてよかった。まあ音はずしてて不安になったが。しかしこれもやっぱりメレンゲクボのやつが大変よかったのでもったいなかった。それにしてもなんで彼女だったんだろうか? ぷくぷくしてかわいかったがそれとこれとは別である。

 五人目は確か堂島孝平である。白いシャツにネクタイ、青系のチェックのズボンをはいている。朝倉と隅倉も似たようなチェックのシャツを着ているので、なんとなくチェック率が高くなる。頭はやっぱりくるくるしていてやっぱり面白い顔である。あまり渋公と変わらない。渋公と同じように面白い顔をしながら(多分素である)、もったりしたイントロの中歩いてきた。「一年間色々なイベントに出てきましたが、今日はワンマンです。初恋の嵐、おめでとう!」と言って悠々と歌い始める。一曲目は「罪の意識」だ。劇的な切り替わりに鳥肌が立つ。玉川はすごい。あんなに小さな体であんなにゴツいギターを弾く。二曲目も渋公と同じ「Nothin'」である。よかった。

 MCで隅倉が鈴木に振っていたがあーとかうーとか言っている間に腹が立ったらしく唐突に次の曲のイントロを始めてしまう。いつもいじられている隅倉が唯一いじれるのが鈴木なのでいいコンビだと思う。そしてベースから始まる曲と言えばあの曲、「UNTITLED」である。そして下手から一人の男が飛び出してくる。ラグランにロン毛でコロッコロしたその男は中村一義だ。うおっ!? いや、どうも中村のビジュアルが小生の中では『ERA』あたりで止まっているので実物を見て相当驚いた。少しお肥えになったようで。かっこよかったが、鬼太郎をロン毛にしたようなツヤツヤした髪をふさふさ跳ね飛ばしながら歌う様はまさに異形だった。とりあえず散髪して頑張って減量してほしい。しかし目つきも犬歯も鋭くて怖かった。相当に気持ちを込めて歌っているからである。何かに怒っているようでもあった。終盤、「西山、届いてるか!」と叫んだのを聴いてはっとした。本当に友達だったのか。そりゃあ感情もこもる訳だ。歌い終わるとニコッとして「どうもありがとうございました」と言って去って行った。一曲だけだがかなりがつんと来た。

 「真夏の夜の事」のイントロが始まった。はっとして下手を見るとやはり出てきたのはスガシカオだった。白地に黒のデカい水玉のシャツを着ている。なんかキザである。終始イヤモニを気にしていて、大サビの時もいじっていたがはずれてしまい、そのまま歌いきった。楽屋でちゃんとはめてこいよ! あと大サビの歌詞もちょっと間違えていたと思うが、割とよかったと思う。演奏もさらにドラマチックになっていたしな。ただ見てるこっちも今にして思えばイヤモニに気を取られすぎたと思う。もうイヤモニはずしてやれよ! 

 「真夏の夜の事」のラスト感が強かったので終わって少しボーッとしたが、もう一人残っている。曽我部恵一だ。髭面だが汚らしさはなく、むしろそれが表情に柔らかさを与えている。この人を見るといい年の取り方をしているなといつも思う。人を安心させるような穏やかな優しい笑顔でメンバーに頷いて、曲が始まった。「星空のバラード」である。10年前も歌っていたよな。高いが広がりがあってどことなく包容力のある声ではないかと思う。


 これで本編は終わったがまだアンコールがあった。しかしもう時間切れだ。そのうち書けそうだったら続きを書こう。

  1. 2012/11/30(金) 14:01:13|
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2012.2.14 対バンの嵐 at 新宿LOFT その2



 もう一度幕が下りる。安っぽい「対バンの嵐」という文字が映し出されて確かまたアトミック・スウィングが流れたんじゃなかったんだっけな。10分だか15分くらいして幕が上がる。上がりきる前からギターの爆音が耳をつんざく。ヒックスヴィルの小暮晋也、中森泰弘。ヒップゲロー、コモンビルの玉川裕高。鍵盤の高野勲、パーカッションの朝倉真司。そしてドラムは鈴木、ベースは隅倉。今日、誰よりもここに立つことを許された8人がそこにいる。初恋の嵐のライブが10年ぶりに始まった。

 一際音のデカい玉川のギターに全ての音が、ノイズすらも絡みついて大きな太い音のうねりになっていく。と、そこに上手からひとつの人影がひらりと躍って中央のマイクの前に立った。この曲、この男。思わず目を見開く。「UNTITLED」、現れたのはクボケンジだった。

 シマウマ柄のカーディガンだったのは即刻意識から遠ざけることにしたが、フジQで精いっぱいだったこの男が果たして落ち付いて歌えるのかは気になるところであった。だがクボはギターを持たない手ぶらの両手でマイクをしっかり握り、目を閉じて歌い始めた。その声を聴いてさらにはっとする。ふわっとして壊れてしまいそうなほど繊細なのである。楽器の音が異様にデカいせいもあるだろうが、メレンゲの曲で聴けるような張り詰めた強さは皆無だ。本来非常にか細い声なのだがそれがはっきりしていた。曲がクボの声より遥かに強靭だからだ。不安定で危うい声である。これも悪くはない。しかし今回のクボンゲに挙動不審な動きは全くなかった。強くなっている。こいつはフジQの時より遥かに腹をくくっている。このへたれ野郎がここまで頑張っているというのは少なからず衝撃だった。

 間髪入れずに次の曲が始まる。メロウなイントロですぐに何の曲かが分かる。「涙の旅路」、今回クボンゲが歌ったのは大昔にカバーした2曲だった。「刻まれることを夢見てた」 この曲はクボンゲの声がよく合っている。サビでは声が張り詰め、そしてぐっと抑えられる。心の底から涙の流れるような曲だった。クボは2曲をしっかりと歌い切り、照れの混じった笑顔で万歳と一礼をして上手に去っていく。

 続いて現れたのはセカイイチ岩崎である。パーマがかかった頭に山高帽を深く被り、白いシャツに黒いチョッキ姿でクボンゲと比べるとかなり小柄だ。マイクスタンドの前に立ち、両手を後ろで組んで目を閉じて歌い出した。一曲目は「Good-Bye」である。岩崎を生で観るのは初めてで音源もそこまで聴いたことはなかった。生で聴くと音響の関係か、甲高く少しかすれて少年のような妙に幼い声に聴こえる。小さい体に甲高い声で振り絞るようにして歌う。何だか子どもみたいだったがなかなかどうしてとてもよかった。岩崎なりに西山に対して敬意と誠意を表わしていると思った。この「Good-Bye」は原曲を聴いている時に未だに思い出す。

 二曲目は打って変わってアグレッシブになる。「君の名前を呼べば」だ。原曲はそれほど激しいイメージがなかったがなかなかどうして生は激しい。バンドの音圧も凄まじいが水を得た魚のような岩崎もなかなか凄かった。音が耳を散々に嬲って去って行った後もしばらく圧倒されていた。

 MCなしで二人のボーカリストが終わるとよくしゃべりそうな顔をした男が現れた。堂島孝平、歌う曲は「罪の意識」だ。彼が歌うのを聴いて驚いた。西山に似ている。多分この日の出演者の中で一番近い存在だったかもしれない。少なくともゲストボーカルの中で別格な存在であることはよく分かった。もったりした序盤からの劇的な転調に度肝を抜かれる。西山もこんな風に歌ったんだろうか。

 二曲目の「化粧に夢中な女の子」はさらに真に迫っていたように思う。こんな曲を歌いながらもひょうきんな顔は変わらない。西山も一見軽薄にすら見えるような男だったということは大分後で知った。彼はどんな顔をして歌ったんだろう。

 曲が終わると初めてMCが始まった。ゲストボーカルの中でも旧知の仲であり、喋りの上手い堂島のところに設けたのだろう。内容はほとんど忘れたが面白かった。堂島にいじられると隅倉がすぐにスネる。それを観て「こんなキャラだったのか!」と思った。いやあ、ナイス。

 そして隅倉が緊張した面持ちで「ゲストボーカルに丸投げするのはよくない。けじめをつけるという意味でも一曲自分たちだけでやろうと思うので聴いてほしい」というようなことを口にした。隅倉が歌う「星空のバラード」が始まる。もともとボーカルではないし緊張しまくっているので技術的には覚束ない。だが悪くなかったと思う。手放しで「よかったよかった」と言うのはどうかと思うがだが欠点を補って余りあるものがあの時あの場にあったのは間違いあるまい。

 その後、これまたスーツ姿の松本素生が登場する。生で松本を観るのはこれが初めてだったがすげえ漫画みたいだった。一曲目は「初恋に捧ぐ」。これはずるいよな。誰がやったってずるい。見事に持って行かれた。そして最後の曲はと緊張していると、始まった。「真夏の夜の事」である。正直、これは松本素生が歌うべき歌ではないと思った。ファンの人には悪いが。今日のボーカリストで歌えそうなのはクボンゲと堂島孝平だが、クボンゲはおそらく曲に負けるのでやっぱり堂島くらいだろうか。あとはいないが曽我部恵一とかか…… いや、本当はそうじゃない。やはりどいつもしっくりとなんか来ない。西山達郎の歌が聴きたかった。結局誰がステージの真ん中に立っていようと、目も耳も心も西山一人の存在をそこに探っていた。今日の主役はやはりあの男ただ一人だ。

 アンコールで堂島孝平が最後にもう一曲だけ歌った。「Nothin’」だ。やはり声の高さや震え方が似ている。圧巻だった。これ以上ないくらい、西山達郎を感じられた夜だった。片手で持てるだけのCDを残して消えた、曲以外にほとんど何も知らない男を。まだ当分は忘れないでいられそうだと思った。






SET LIST

クボケンジ(メレンゲ) 1. untitled
2. 涙の旅路

岩崎慧(セカイイチ) 3. good-bye
4. 君の名前を呼べば

堂島孝平 5. 罪の意識
6. 化粧に夢中な女の子

7. 星空のバラード

松本素生(GOING UNDER GROUND) 8. 初恋に捧ぐ
9. 真夏の夜の事

(ENCORE)
堂島孝平 10. Nothin’



  1. 2012/10/15(月) 00:53:19|
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