inkblot

落ちた花を拾って並べるように

 つばきの一色が亡くなった。自分はライブに欠かさず足を運んだりするような熱心なファンではなかったので、何か言うのもおこがましいのだが、単純に喪失感がある。

 脳腫瘍による闘病から戻ってきた彼には、目を逸らし得ないほど明確に病の爪痕が刻み込まれていた。余裕なんか全然ないし全然カッコよくない。でも全力で食らいついている。そこに圧倒されていた。そういった部分と演奏に対する評価はまた別だが。そういった身体的な制約とは離れたところで曲は輝いていた。

 なんとなく、彼は足掻きながらまだまだ声をあげながら生きてゆくのだと信じ切っていた。去年、そして今年もまた脳腫瘍がいとしい天才をわれわれから奪っていく。脳腫瘍! 脳腫瘍という病のむごたらしさには、もう何と言っていいのかわからない。芸術家を芸術家たらしめている大切な部分を食い荒らして、あまつさえ命まで奪うのか。じわじわと、急速に、人として、生き物として壊れてゆく。穏やかな最期だったと漏れ聞くのがせめてもの心の慰めだ。

 この穴の開いたような気持ちを忘れた時のために、落ちた花を拾って並べるように、ほんの少しだけ書きとめておく。


  1. 2017/05/16(火) 03:22:50|
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