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めちゃくちゃめでたい

金澤先生、ご結婚マジでおめでとうございます!!! 

「金澤ダイスケより皆様へ大事なお知らせ」とかマジでやめてくれ、嫌な想像ばっかで心臓止まるかと思ったぜ。なので喜びも倍増である。うわー、ただのファンでしかねえしなんかよく考えたら全然関係ない人間だけど、めちゃくちゃうれしい。もうめちゃくちゃ幸せになってほしいし、全世界をあげて金澤先生を幸せにしてえ。

しかし結婚とかってめちゃくちゃめでたい、いいことなのに公表するのは面倒くさいことも多かったりする。でもこうやってちゃんと教えてくれるのは誠実だと思う。しかもファンには正式な発表時刻より少し早めに公表していたので、その気持ちがうれしい。まあうがってみれば、相手がSuperflyというビッグネームなので隠してバレたらめちゃくちゃ不誠実な上に隠しきるのも難しいというのもある。でもさ、よく取ればいいんじゃないか。

越智氏のことはよく知らないのだが、金澤先生が選んだ人なら最高な人に決まってるべ。めちゃくちゃめでてえよ。大きな悲しみが襲いかかってきた時でも、弱音を吐かずバンドを引っ張ってきた人である。どうしたって悲しみは消えない。でもあなたのこれからを祝福しよう。あなたの幸福を願っている。金澤先生、ほんとうにおめでとう。正直複雑な気持ちの人もいるだろうけど、できる範囲で見守ればいいと思う。傷つけたり呪わないというレベルからだってすでにもう祝福たり得るのではないか。あと「金澤のものは俺のもの」理論を適用すると、金澤先生が幸せになった分だけ志村も幸せになるのではないか。やったな志村。しかし志村はひねくれてるくせに妙に素直なところがあるので、きっとめちゃくちゃ喜んでいると思う。あんなウエディングソング書いちゃう男だぜ。違いねえ。





ところであの、祝辞の人選だけはよく考えた方がいいと思うよ

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  1. 2018/04/17(火) 22:48:34|
  2. 音楽
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20180111 斉藤和義×山内総一郎


 昭和音大に山内総一郎と斉藤和義の弾き語りツーマンを観に行ってきた。ステージの上に並んで二枚の絨毯が敷かれ、定刻通りに客電が落ちると、二人で仲良く下手から現れる。山総のマイクがおかしくて最初何を言っているのか全然聞こえなかったのだが、客席から「そうちゃん、聞こえない!」という声が飛び、「うそ~? (せっちゃんのマイクを借りた途端に声が大きくなる)マイク? あ、ホントだ」とかゆるいやり取りがあり、せっちゃんとマイクを持つのか持たないのか持ってもらうのかみたいなやり取りがあり、とりあえず先攻は山内総一郎である。

 上手側の絨毯が山総で、アコギ一本と小さいバスドラひとつというシンプルなセッティングだ。せっちゃんといえば黒のギブソンJ-45がトレードマークだが(そしてギブソンのアコギといえばああいう音だが)、山総のアコギはこうしてじっくり聴くと朝の光のようだった。生まれたてのような清らかさがある。一曲目は「カンヌの休日」。ギターもボーカルも強弱をつけていた。新鮮。二曲目は「カタチ」。これアコギ、めちゃくちゃいいな。一番このギターの音に合った曲だったと思う。最高。

 前半の講義でルーツの話をしたらしく、「斉藤さんも僕もやっぱりビートルズで」というところからビートルズのカバーで「I Will」。英語はあんまりうまくないけど、でも彼が歌うとこの曲のかわいらしさがよく伝わってくる。とてもよかった。

「『小さい頃の夢は叶いましたか?』っていう質問をしてもらいまして。ああ、いい質問だなあと思って。それで考えてたんですけど。。フジファブリックとしてデビューして、志村君が旅立ってしまったのはあまりに早かったとは思うんですけど、こうして続けられていて、ある意味夢は叶っているのかなと、思ったんですけど言えなかったので今言います! そういうことを思い返していて、志村君がいなくなってしまった時、はじめて自分で歌うということを意識して書いた曲が、「ECHO」という曲がありまして、もともとやる予定の曲ではなかったんですけども、やろうと思います」

 「ECHO」。終わったあと、あくびをしてオーディエンスに笑われる山総である。「眠くないですよ! なんだろ。。なんかふ~~って抜けたんかなあ?」みたいなことを言っていた。

 たしか「LIFE」の序盤でエフェクター踏み忘れていたらしく、「ん?」という顔をしてからひょいと横に足をのばして踏んでいた。素で演っている感じだった。間奏のギターを歌いながら自由に弾きまくっていると手拍子が止まっているのに気づいたらしく、「手拍子続けてていいよ?」と言っていた。完全に素である。

 せっちゃんのカバーは「劇的な瞬間」だった。山総が歌ってもなんかせっちゃんの女々しさが残っていて面白い。「斉藤さんはちっちゃい頃からカッコよかったんだろうな~~モテてたんだろうな~~(手を振りながら)『斉藤和義で~す』みたいな」とか寝言みたいなことを言っていたがちょっと何を言いたいのかよく分からなかった。いったい何の物真似なんだ。山内総一郎のなかの「カッコいい」という概念に不安を覚えた。

 「虹」はギターの音も相まって澄んで爽やかで、ホントに雨が上がったあとのようだった。途中で「最後の曲なんで盛り上がってください」とか言い出す。曲中にMCタイムを設けがちである。結果、大盛り上がり。アウトロのギターは清冽な嵐のようだった。

 せっちゃんは書いてたら終わらなくなりそうなので、割愛。「アゲハ」や「あこがれ」、「マディウォーター」とかやってたっけな。山総とタイプは違うが、せっちゃんのギターも鬼うまい。「やさしくなりたい」「歌うたいのバラッド」「ずっと好きだった」という誰でも知っているそしてみんなぶち上がるくそ名曲を連発してくれるあたりも最高。ただMCはなんか9割がたうめき声だった。たぶん下ネタを言いたいのにお堅いシチュエーションで言いづらかったからだと思う(失礼)。最初はもそもそしていたが、そのうち言いたい放題言っていた。予想通りである。



 アンコールは二人で出てくる。「斉藤さんと二人っきりってはじめてですよね」と山総が言い出し、「そうだっけ? まあ普段は奥田民生とかトータスとかいるからね」となんか言いたそうなせっちゃんに「はじめてだと思います!」みたいなことを自信ありげに言い切ったが、すぐにラジオでやっていたことが判明する。ゆるい。一曲目は「進めなまけもの」。

 「フジファブリックの曲、ホントむずかしくてやだ」とか言いながら「前にラジオでやってうまくできなかったからリベンジします」ということで「ブルー」。「リベンジできたかも」と言っていた。

 「この人、今は俺と一緒だからこんなこと言ってますけど、はじめて買ったCDはウルフルズですからね」とひねくれたことを言いながら唐突に「バンザイ」を弾き語りはじめる。段取りもくそもないので、適当なところで「はい」と山総をうながす。ああいう人間なので、せっちゃんが「歌え」という圧をかけながら見つめても絶対に気付かない。終わったあと、「いない人の歌を。。。」と山総が笑っていると、またせっちゃんがしれっとなにか弾きはじめる。「イージューライダー」である。わざとリフや歌詞を適当にごまかす。山総はバカ正直にちゃんと歌うし、コーラスもばっちりである。この二人、いつもコーラスめちゃくちゃよくないですか。だが山内総一郎はやらないぞ。端折って短めに終わる。

 そういやどっかでせっちゃんが「そうちゃんになら抱かれてもいい」的なことをもっと露骨に下品な言い回しで言い出したんだけど、危機感しかないよな。対して山総は「え~~! 斉藤さん、背でかいからな~~背でかいからな~~」と謎の悩みを抱えていた。せっちゃんも「背。。。?」みたいになっていたが、アホも一種の安全機構なんだなあ。もうむしろそのままでいてほしい。しかし下ネタおじさんとか、メガネを5メートル飛ばす電車オタクとかまわりに悪い虫しかいないので、そろそろ志村はこういう不良中年の夢枕に立って牽制しておいた方がいいと思う。

「えーと、、いちおうもう一曲ちゃんと練習してきた曲があって、、練習したよね?」
「しました!」
「また俺の曲なんですけど、、「FIRE DOG」という曲をやります」

ということで「FIRE DOG」。アコギなのにバキバキである。めちゃくちゃかっこいい。終盤はギターバトルの様相を呈していた。最高。でも山内総一郎はフジファブリックのものだぞ。




  1. 2018/02/02(金) 12:45:48|
  2. 音楽
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新年

 明けましておめでとうございます。新年早々風邪をひいていて、まだちょっと調子が戻らない。しかしまあ大学休んだりはしなかったのでラッキーと言えばラッキーである。いま山総とせっちゃんの弾き語りツーマンを書いたりしているのだが、なかなか書き終わらないのでとりあえずあいさつだけ。今年もぼちぼちやっていこうと思うのでよろしくお願いします。それにしても初ライブ、最高すぎた。最近全然山総を観に行けてなかったので、出てきただけでなんか感極まって泣いていた。保護者かよ。我ながら気持ち悪いと思うが、冷静に考えて熱があったので多分そのせいだと思う。弾き語りワンマン行かれなかったの、めちゃくちゃ悔しかったのだがちょっと成仏できそうである。いややっぱ死ぬまでには観たい。


 そういや文フリに出した本を
通販できるようにしました。
ここに載せたものもありますが、結構書き直してるので読んでもらえるなら紙で読んでもらいたい。そっちがベストです。もちろん未発表の話も面白いと思う。ぜひ。



今年初の富士山っす。





  1. 2018/01/16(火) 18:35:41|
  2. 雑記
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富士吉田、新宿

 12月24日は富士吉田に向かった。なんだかんだここ数年は行かれなかったので、久しぶりである。なんというか、もう8年になる訳だがやっぱりこの日と面と向かって対峙する根性がなくてついごまかすように違う予定で埋めてしまう年が多かった。いやいや無理無理。まっすぐ向き合ってしまったら、心が潰れてしまう。しかし今年はこれまでとは違ったので、ちゃんと志村に会ってこようと思った。

 24日の過ごしかたを誰か教えてほしい。自分にとってはとても深刻な日だ。でも我に帰るといつも恥ずかしい。家族でも友人でもないのになんでこんな大事なんだろうな。個人的に心配で仕方ないのはなんかさみしい思いをしてないだろうかということである。あんまり穏やかな最期をイメージできてないからだろう、寒かったりさみしかったり苦しい思いをしてないかとどうしても考えてしまう。そう思うと自分もつらい。気付くといつもぼんやりそんなことを気にしている。

 富士吉田の手前、どこらへんだったか、山のあいだからやっと大きな富士山が見えた。近くで見ても蒼く煙るようなやさしい色をしている。それを見た時、なんとなく大丈夫な気がした。この大きな山がやさしく抱き留めているなら大丈夫だ。さみしくないよな。志村のとこにもひっきりなしに人が訪れていた。べつに自分は何でもないんだけど、なんかホッとした。愛されてるよな。

 天気も崩れそうだったが、日中はそこそこいい天気で助かった。そんなに寒くなかったしな。まあ寄り道したらしっかり降られたので、志村。。。と思っている。翌日、めちゃくちゃいい天気だったのもたぶんやつの仕業だと思っている。だってクボンゲのライブ、だいたいいつも雨だもんな。

 志村のことが好きな人全員に観てほしいような素晴らしいライブだった。クボンゲはうれしそうに志村の話をしていた。クリスマスにライブをやる理由みたいなことを、もしかしたら本当は言葉で伝えたいと思ってもいたかもしれないが、言葉からは完全にあふれていた。しかしまあみんな分かっている。「朝携帯を見たら、メールが来てまして、、、志村正彦から来てまして。。。『今日ライブ行くよ』みたいな内容だったんですけど。。。あの、たぶん、お母さんが気を利かして送ってくれたんだろうなあと、、思うんですけど。。今日、がんばらないとなと思ってます。。。」と言っていた。

 「志村が来ていた」とか言うと怪しい感じがして嫌なんだが、でも実際にいたよなあれは。個人的には見えない志村をクボ氏のそばに感じたというのではなく、クボ氏にレイヤーをずらしながら重なるように志村がいたような感覚があった。そばじゃない、同じ所だ。ダブって見えるのである。意味わからないよな。。。それにしても、「タイムマシン」と「若者のすべて」のカバーはなんとも言えない不思議な感覚が残る。彼の持っているものは全然違うはずなのに、なんであんなに志村そっくりなんだろう。声質なんかかけ離れてるのに、それ以外信じられないくらい志村だ。こんなこと言っていいのかわからないが、クボ氏は自分の中に生きている志村を守っているんだと思う。これから先も志村に歌わせてほしい。

 なんというか、ホントに楽しい夜だった。観ている側だけでなく、ステージの上の3人がホントに楽しんでいた。その反面、明らかにひとつの儀礼の夜からでもあったと思う。ある出来事を語り継ぐために、伝承に基づいて儀礼は反復される。繰り返し繰り返すことが重要だ。宣言でもあったと思う。「富士吉田でライブしたい」「また来年もやりたい」と言っていた。それ絶対忘れないからな。

 なんかまったく書ききれない。今年中にはもう無理だな。。。しかしクリスマスを楽しくしようとクボ氏が言うなら自分は彼を信じようと思った。楽しいクリスマスはなにかをかき消そうとするものではなく、むしろそれに根ざしている。それが明らかだから信じられる。ありがとう、志村とクボンゲ。生まれて初めてのクリスマスだった。







  1. 2017/12/31(日) 11:47:52|
  2. 音楽
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いと気高き輝きの星よ


 もう時間が経ってしまったし、自分でも何を書いているのかよくわかってないのだが、載せておく。






 聴こえる。高速道路を行きかう馬車の音だ。生きとし生けるものが発する熱っぽい音がする。そのやかましい音で、心地よい微睡みから醒めてしまった。さっきまでおれは、ゆるやかにほどけて世界(サカ)のすみずみにまで広がっていたのだ。だが、目覚めてしまった。おれは世界から切り離され、ひとつところに凝り固まり、ぎこちなくかすかに身じろぎしている。おれは誰だ。ついさっきまで、ほんのついさっきまでおれは世界そのものだったのだ。でももう違う。この世界から切り離されて、おれは独りぼっちだ。おれは誰だ。もう分からなくなってしまった。おれは何故ここにいる。誰かがおれを呼んでいたような気がする。誰かは分からない。ここは何処だ。冥(くら)い。寒い。ここは土の下の穴ぐらの中だ、おれのからだは何処だ。脆く崩れかけたこの塵芥のようなものが、おれの肉か。この溶岩と分かちがたく押し固められたものがおれの骨か。とっくに朽ち果てた頭(かしら)の毛が太った。この宙吊りの状態がおそろしい。今のおれは塵の山ではないか。無情な風の前にひと時かろうじてかたちを保っているだけだ。しかしそれがおそろしい。輪郭も曖昧なひと時のかたちであったとしても、こうしてまたかたちを取ってしまった後では再び散り散りになってしまうのが途方もなく怖い。塵でもよい。ゆっくりと、少しずつ、おれの断片を寄せ集めていく、腕らしき所が反応してわずかに動く。脚らしき断片も形を整え始めた。徐々に意識も最前よりもはっきりとしてくる。それにしても寒い。ああ、寒い。ここは最早おれに安らかな眠りを、死のまどろみを与えてはくれない。出よう。

 土をおしわけ、おしわけ、墓穴を開いていく。鋭い氷のような空気が顔を刺す。ごつごつとした石があたりにごろごろと転がっている。そうだ。ここは大いなる火を秘めた山の麓だ。この溶岩はもうおれではないのだな。もうおれを受け入れてはくれない。硬く冷たく拒絶している。ようやく開いた墓穴から、ずるりずるりと体を引きずり出す。目玉はないからよく見えない。たよりは触覚だけだ。何かあたたかいものに触れた。その中に入り込む。目が明いた。あたりはまだ冥(くら)い。夜なのだ。誰もいない。街は死んだように静まり返っている。空気に何かなつかしいものが混じっている。それが胸を刺す。 

 ふらふらと立ち上がり、歩き出す。誰かに会いたかった。路地裏をさまよい歩く。なつかしい。でもどこかよそよそしい。おれが死したるものだから、誰も受け入れてはくれないのか。少しずつ、記憶がよみがえってくる。おれは、そうだ。おれは音楽家(カウボーイ)だった。この街で生まれ育ったカウボーイだ。カウボーイになるために故郷を捨てた。死んでようやく帰ってこられた。ずっと帰りたかった故郷(ふるさと)に。路地から路地へとうつろっても、街に人気はない。死んでいる。街も。おれは独りだ。

 メインストリートの小さなレコードショップの前で足が止まった。薄氷に包まれているようなぼんやりとしたショーウィンドウの奥に、ポスターが浮かび上がって見えた。覗き込んで目を凝らす。おれの楽団(バンド)だ。冷たいものが足元から這い上がってくる。そこにはよく知っている三人が、未来の日付とともに写っていた。おれのバンドの仲間だ。おれ以外の。おれのいない未来では、おれ以外の三人の楽団が続いていて、きっとおれのことなんか思い出してはくれないのだ。目から泥のような涙があふれ出す。地面に落ちたそれは世界を溶かす。淋しい。その感情以外、世界すべてが溶けてゆく。世界は漆黒、ぬばたまの闇だ。寒い。おれと一緒に虚無という温い海に沈んでゆこうではないか。



 遠くの空がなにかおかしくなっていくのが見えた。朝はまだ大地の半分くらいにしか訪れてはいなかった。向かう先の空はほんのり桃色に染まりはじめていたが、その色がある一点からどこかへ落ち込んでしまったように褪せて、なんだかかたちも少しずつゆっくりと崩れていく。

 そこから世界が壊れていた。世界が粘度の高い闇に落ち込んでいく。懐かしい、と、御者台からそれを見て取りながらモイトリは思った。もったりしているのに物凄く暗くて寒くてさみしい闇だ。懐かしい。俺はこの感じをよく知っている。怖れはない。ただひたすら愛おしかった。

 ホロの中からそっとモイトリを呼ぶ声がした。振り返ると、ツムジとタテユクが顔を出していた。ツムジは暖かい外套とたっぷりと引き寄せているのに、心なしか蒼い顔をしている。タテユクはいつもと変わらず穏やかな顔だったが、双眸の奥にどこか張りつめた光があった。

 タテユクがホロをまくって中をモイトリに見せる。ホロの中では一本のギターが激しくひとりでに鳴動していた。ペールブルーのフェンダー、ストラトキャスター。マスタービルト。ダメージ加工を施されたボディが、六弦の振動を受けて震えている。デミアンのギターだ。

 モイトリは二人に空の異常を伝えた。三人は素早く目を交わす。モイトリがふっと息を吐いた。息は白い雲になって空へ昇っていく。

「急ごう」

 六年前。六年前のあの寒い日だ。デミアンが死んだのは。ある街の宿の一室で。突然だった。その時、誰もそばにはいなかった。いつも孤独な闘いをしていた。でも、同じ楽団の仲間だ。一緒に闘いたかった。けれども彼は死ぬ時も独りだった。

 彼の故郷は聖なる山の麓にあった。彼のなきがらは、偉大なる山に抱かれた石の奥津城に眠っている。今日は彼の死んだ日。それは残された三人にとっては碑のように立ち現れる一日だった。彼がいない今も楽団は続いている。三人は終わらせることを選ばなかった。彼のことが、彼の曲が好きだったからだ。彼の作った歌をまだ鳴らしたかった。バンドはデミアンのバンドだった。そして今でもそうだ。

 今日も三人は早くに街を発って、彼に会いに行く途中だった。おかしくなっているのは確かにあの街の方だ。行かなくてはならない。デミアンだ。デミアンが呼んでいる。モイトリはギターを掴んだ。アンプの電源を入れる。ツムジとタテユクもそれぞれ楽器を手に取る。体からあふれ出した歌は馬の脚を速くしていく。



 泣きながらさまよった。また何も見えなくなる。常闇だ。涙の落ちるリズムと震える息が何かになりかけている。体が熱を欲している。まだ寒い。ギターがほしい。

 両手で地べたを探ると、冷たい弦に手が触れた。どろっとした闇の中から引きずり出す。フェンダー、テレキャスター。手に馴染んでいる。ピックガードに挟まっていたピックを引き抜く。

 噛み合わない分散和音(アルペジオ)がパラパラとこぼれる。奇妙な和音(コード)から奇妙なリフが生まれた。エフェクターもかけていないのに、勝手に歪(ひず)んでいる。いくつかの音が響き合い、歌になり始める。歌から陽炎のような残像がゆらゆらと立ち上る。踊っている。踊らされている。


 遠くに何か小さなものが見えた。蒼い鳥だ。あれはおれだ。常闇が視覚を狂わせるので飛んでいるようにも見えようが、あれは地べたに墜ちているのだ。燃えるような体温はもうない。翼は折れている。夢の中でさえ、おれは飛べない。点々と散っている蒼い羽を踏みにじっていく。

 ぶくぶくと沈んでゆく体を浮かび上がっているように見せていた。どんなに歌ってみせてもそれは見せかけに過ぎない。足掻いているうちに頭まで沈んでいた。泡だけが遥か上の水面までのぼっていく。いっそ深い海の底まで行ってしまおう。そしてそこで眠りにつこう。心が擦りむけている。それを誰にもさらけ出せなかった。ここにはもう誰もいないから、そっと心を開いていく。どっと流れ出す血もここでは闇にまぎれてしまう。心地のよい闇だ。随分深いところまで来たな。粉雪のような白いものが静かに降り出した。知らない誰かの体とそれっきりでいよう。この体はなぜかよく馴染む。なんだかよく知っているようでもあったが、頭に靄がかかっていて思い出せない。リフがループしているなか、新たなコードを乗せる。歌がゆっくりと広がっていく。



 世界はまだ神々の領(うしは)く時間の中にいる。人の時間はまだ先だ。街々はどこも静まり返っていた。闇はほんのりと薔薇色の靄に包まれた朝焼けの街を呑み終わり、まだ死に似た穏やかなまどろみの中にある蒼い街々にまで伸びていた。放っておいたら世界をすっぽり呑み込んでしまうだろう。世界はさびしい。世界はむなしい。世界がその内側に抱えているどうしようもないさびしさ、むなしさに呑み込まれていく。自壊するように。なんてさびしいんだろう。だが放ってはおかない。ひとりきりで泣き叫んでいる友を救いに行く。

 モイトリは赤いストラトキャスターの弦を強くはじいた。早くあの闇の中に入りたかった。力技で、音を撚りあわせ、無理やり空間に暗示をかける。彼とわれらのあいだに距離はない。ゼロ距離。恐るべき力でねじ伏せていくが、あともう少しで届かない。モイトリは伸ばした手をすっと引いた。彼とわれらのあいだの距離はもうさしてない。距離は一マイル。空間に完全に暗示がかかる。イメージ通りの暗闇の中に、馬車は転移する。三人の身体にどっと重い負荷がかかった。モイトリの口の中には鉄の味が広がり、ストラトキャスターの弦は白く発光して指を痛めつけていたが、彼は気付いてすらいないようだった。タテユクはやはり表情を変えていなかったが、彼のはじく太い鋼鉄の弦もやはり真っ赤に焼け、彼の指を爛れさせていた。ツムジの鍵盤を叩く指も爪がはがれかけている。だが構わず音を鳴り響かせながら、進んでゆく。その轍はまばゆく力強く輝いていた。

 あたりの闇が一段と深くなった。その中心にくっきりとした人の輪郭がある。それを目にしたモイトリは一瞬だけ声を詰まらせ、ほかの二人は刹那、瞳に暗い色をよぎらせた。よく知っているが、知らない男だった。肉体の持ち主の容貌とデミアンの容貌が入り混じり、新たな容貌が生まれている。だが、たしかにそこに居るのはデミアンだった。その大きな目は黒い闇を涙の代わりに流している。飴色のテレキャスターを抱え、長躯を持て余すように何もない無の空間に座り込んで、虚無の寒さに震えながら果てのない嗚咽を漏らしていた。



眠りを破るざわめきが 止まった心臓に入り込んで
勝手に脈を打つ
夜でもない 朝でもない 薄暗がりで目が覚めてしまった
強張った体が独り 取り残された

骨が緩んでがちがち鳴っている 繋ぎ留める温もりがないから
骨のあいだに積もった時間が 朝の世界から記憶を削り落とした
忘れられた歌は 誰の耳にも届かない
冷たい涙が 血の代わりに 内側を駆け巡って 体を焼く

もう二度と朝と出会えないのなら 太陽など呑み込んでしまえばいい
もう二度と夜を照らさないのなら この月など粉々になってしまえ
受け入れてくれない世界を呑み込んで ひとつになってしまいたい



 ひたひたと世界を浸すその歌に耳を澄ますと、音が体の中に飛び込んでイメージとなって走る。高速の馬車の音。溶岩の混ざった土の中。誰もいない街。レコード店。三人だけのポスター。そのイメージが広がった瞬間、六つのするどい痛みが、三つの胸をするどく刺し貫いた。モイトリの瞳が一瞬、絶望でかき曇る。だがすぐにまたもとのように澄み渡る。彼に向けて声を放つ。

「デミアン」

 男がゆっくりと頭をめぐらせる。はじめてモイトリを見る。

「久しぶり」

 芳しい反応はなかった。しかし光のない眼はじっとモイトリを見ている。

「あれからそれなりに時間が経ったんだ。最近どうしてるか話してもいいかい。俺たちはまだ歌い続けてるよ」

 デミアンの肩がわずかに強張ったのを三人は見逃さなかった。

「なんでかわかるかい? きみの歌を聴いてほしいからさ。きみはすぐ自信をなくしていじけるけど、ホントにいい歌なんだ。きみが見失ってしまうなら俺たちが何度だって言ってやる、きみは最高だ。……言いたいことは山ほどあるよ、何ひとつうまく言えないけど」

 デミアンのギターを持つ手が緩む。

「もしきみと出会わなかったとしても、俺はギターを弾いてただろう。けど、でもなにか違うんだよ。きみの歌がかたちを与えてくれたんだ、もう他のかたちにはなれない」

 モイトリは真っ直ぐに友を見据えた。

「きみのことが大好きだ。きみの歌が大好きだ。いつまでもきみの歌を鳴らしたいんだ。俺たちがきみのつけた名を名乗って歌い続ける理由はただそれだけだよ」

 デミアンのギターが止まった。馬車の御者台からひらりと飛び降りる。ギターを、ベースを、鍵盤を弾く手は少しの空白も許さなかった。音が加速してゆく。歩み寄る。

 モイトリが力強くストロークを弾き出す。その響きが生み出したのは、目を潰すような強烈な白熱する光だった。六弦がしなり、強靭なアルペジオが一音一音編みあわされてゆき、優しく、しかし決然と闇を切り裂いてゆく。モイトリが歌う。声は伸びやかに広がる。音楽の推力が三人の体を運んでいく。三人のカウボーイは、とうとう死せる友を取り囲んだ。

「思い出して。きみの中には暗くて寒くてさみしい闇と、その闇ゆえに強く輝く星がある。ともにバンドを組んできて、俺らの中にもきみと同じ闇がある。そして星のかけらもまた、俺たちの中にある。今、きみの中の星が暗闇に飲まれてしまったというのなら、俺たちの星をきみに返すよ」

 三人は友の胸に光の白刃を叩き込んだ。

「きみは、星(スター)なんだ。そんなさみしい歌、歌わないでくれ」

 デミアンの目からあふれ出すものが、黒いものから透き通ったものに変わっていく。瞳が洗い流され、澄んでくる。デミアンの大きな瞳に、はじめて三人の姿が映り込んだ。

「モイトリ、タテユク、ツムジ……!」

 涙の湛えられた大きな目に、ぐっと力がこもる。

「俺を、忘れないでくれ」

 タテユクが穏やかな顔で答える。

「忘れないとも」

 言葉に不思議な頼もしさがあった。

「もちろん」
「まかせろ」

 ツムジは澄ました顔で、モイトリは笑顔で答える。真剣な目でじっと見ていたデミアンがふっと笑う。

「安心した。これでまたゆっくり眠れる」

 デミアンの体から力が抜けていく。かりそめの体からあくがれ出でて、拡散しながら世界(サカ)そのものへ還っていく。もちろん三人も世界の一部だ。どこかで彼の一部をもう一度抱きとめる。束の間の対話は終わってしまった。

 空の色は雲ひとつない抜けるような蒼だった。風は冷たく、大気は氷のように澄み渡り、 指がポロポロと落ちそうなほど寒い。だが生命の気配が戻っている。

 モイトリは緊張の糸が切れたように、ゆっくりと膝をついた。溶岩の混じった土のごつごつした感触が膝に伝わる。そのままボロボロと泣き始めた。涙はなかなか止まらなかった。高くそびえる聖なる山も、その蒼さの中にさみしさを溶け込ませながら、小さな古びた街をその懐に抱いていた。





  1. 2017/12/24(日) 12:39:05|
  2. 短編
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